著者
田中 宏光 西宗 義武 奥山 明彦 辻村 晃 宮川 康 田中 宏光
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

実験動物(マウス)における精子細胞特異的遺伝子の解析からヒト男性不妊症の診断・治療法の開発を進めるため、以下の二点に焦点を絞って研究を進めてきた。1. 現在までに我々が単離したマウス精子細胞特異的遺伝子についての詳細な構造・コードする蛋白質の機能・特異的発現機構をさらに多くの新たな遺伝子について解析し、精子形成過程における役割を明らかにする。さらに、それらのヒト相同遺伝子をすべてクローニングし、その機能解析を進める。2. 精子形成機構の分子生物学的研究を通じて、ヒト男性不妊症の原因を究明する。基礎研究の成果を応用し、遺伝子変化と男性不妊症との関係を明らかにし、最新の遺伝子解析(マイクロアレー法)、蛋白質解析技術(プロテオミクス法)を用い、その診断法及び治療法の確立に役立てる。平成19年度我々は、1.マウス遺伝子の解析結果から、男性不妊症に関係することが考えられる精子細胞特異的解糖系遺伝子のヒトオーソログをクローニングし、ORF内のポルモルフィズムの解析を進めた。ヒト精液を用い、男性不妊症で有意に変化を示す蛋白質とmRNAの解析を進めた。その結果、男性不妊症特異的に変化をする蛋白質の存在を確認した。また、ヒト精液から得られたmRNAを抽出し、ヒト精子形成関連遺伝子を乗せたマイクロアレーを用いて遺伝子発現を調べる系を確立した。確立した系を用いて個体差や生活条件に影響なく妊孕性の確認された男性に安定的に発現が確認される遺伝子群を同定した。今後これら遺伝子と遺伝子産物に注目し不妊症男性不妊症特異的マーカーを確立したい。