著者
田中 寛之
出版者
一般社団法人 日本老年療法学会
雑誌
日本老年療法学会誌 (ISSN:2436908X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2023-02-13 (Released:2023-02-15)
参考文献数
32

認知症を呈す多くの疾患は進行性である。そのため,支援者は疾患の進行経過を理解し,対象者の今のステージを把握する必要がある。現在の医学では,アルツハイマー病をはじめとした認知症を呈する変性疾患の根治的治療は困難なため,いずれは中等度・重度の段階に至る。中等度・重度の段階は,軽度や軽度認知障害の段階と比較して,病態は複雑化し評価・介入が難しくなることもあるため,これまでは支援者の経験値に委ねられたものとなり,根拠に基づいた支援が行われていなかったように思われる。認知症者に適切なリハビリテーション・ケアを行うには病状を重症度ごとに,目的に合わせた評価法を用いて,その結果を解釈し,個別性のある介入戦略を立てる必要がある。しかし,中等度・重度の段階で使用できる各種評価法や介入のために活用できる概念モデルについては,これまであまり知られておらず,特に国内では浸透していなかった。本稿では,中等度・重度認知症者で用いることができる認知機能,日常生活活動(Activities of Daily Living; ADL),行動心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia; BPSD)の各種検査・評価法や介入の際に参考にできる概念モデルについて概説する。今後,この段階における研究がさらに進むことが望まれる。
著者
田中 寛之 永田 優馬 石丸 大貴 日垣 一男 西川 隆
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.405-415, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
17

本研究の目的は,筆者らが開発したライフヒストリーカルテ(以下,LC)の導入による病院・施設職員(以下,スタッフ)の患者・利用者に関する理解度への影響を明らかにすることと,LCの利点と活用法を具体的に示すことである.患者・利用者に関する医療・介護者の理解尺度をLC導入前と導入1年後に実施し,さらに,スタッフにLCの利点と有用な活用法を自由記述してもらった.LCの導入による医療・介護者の患者理解度の改善はみられなかったが,「食思不振改善のヒントになった」などの自由記述から,多くの利点が明らかになった.