著者
田中 寛之 永田 優馬 石丸 大貴 日垣 一男 西川 隆
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.405-415, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
17

本研究の目的は,筆者らが開発したライフヒストリーカルテ(以下,LC)の導入による病院・施設職員(以下,スタッフ)の患者・利用者に関する理解度への影響を明らかにすることと,LCの利点と活用法を具体的に示すことである.患者・利用者に関する医療・介護者の理解尺度をLC導入前と導入1年後に実施し,さらに,スタッフにLCの利点と有用な活用法を自由記述してもらった.LCの導入による医療・介護者の患者理解度の改善はみられなかったが,「食思不振改善のヒントになった」などの自由記述から,多くの利点が明らかになった.
著者
田中 啓規 立山 清美 原田 瞬 日垣 一男
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.645-653, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
21

本研究は,自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder;以下,ASD)のある児の箸操作の特徴を明らかにすることを目的とした.ASDのある児18名と定型発達児16名を対象とし,「箸の持ち方」,「箸の操作パターン」,「箸操作時の指の動き」を比較検討した.その結果,ASDのある児の箸操作の特徴として,「箸を開く時の一定しない母指の動き」,「橈側と尺側の分離運動の未熟さ」,「動きが一定しない不安定な指の動きによる箸操作」があることが明らかになった.また,これらの要因としては,手指の分離運動の未熟さ,視覚優位な情報の捉え方,行為機能の障害が影響していることが考えられた.
著者
原田 瞬 立山 清美 日垣 一男 田中 啓規 宮嶋 愛弓
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.165-172, 2017-12-31 (Released:2020-04-20)
参考文献数
16

自閉スペクトラム症(ASD)は,社会的コミュニケーションの障害を主症状とし,近年増加傾向にある.ASD 児は,定型発達児よりも高い割合で偏食等の食事に関する問題をもつことが知られている.著者は,臨床で口を開けたまま咀嚼しているケースを多く目にした経験から,ASD 児には口腔機能の未熟さがあり,食べにくいという経験を積み重ねやすいのではないかと考えた.ASD 児の口腔機能については,食事場面の観察評価から,捕食,咀嚼,前歯咬断や嚥下の問題が指摘されている.しかし,定量的な指標を用いた評価や定型発達児と比較検討した報告はなされておらず,ASD 児の口腔機能の実態は十分には明らかになっていない.そこで,本研究の目的は,定型発達児との比較によりASD 児の口腔機能の特徴を明らかにすることとした.ASD 群27 名,定型発達群25 名を対象に,捕食機能,咀嚼機能の定量的な評価を試みた.捕食機能については,定型のスプーンからヨーグルトを捕食した際にスプーンに残ったヨーグルトの量から評価した.咀嚼機能については,定型定量のせんべいを摂取した際の咀嚼回数と,咀嚼中にどの程度口唇閉鎖ができているかを評価した.両群の口腔機能を統計的に比較した結果,ASD群においては,口唇を使ってスプーンから食物を取り込む捕食機能が未熟であった.また,定型定量の食物を食べた際の咀嚼回数が定型発達群よりも有意に多く,咀嚼中の口唇閉鎖が明らかに未熟である児が多かった.ASD 児の食事に関する問題については,ASD 児の感覚の偏りや,行動の特性によるものと考えられてきたが,口腔機能の未熟さという視点を加え,総合的な支援が必要であることが示唆された.