著者
田中 庸一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.1161, 2016 (Released:2016-12-01)
参考文献数
4

6-メルカプトプリン(6-merca-ptopurine:6-MP)やアザチオプリンなどのチオプリンは,急性リンパ性白血病(acute lympho-blastic leukemia:ALL)や炎症性腸疾患の治療の中で主要な薬剤の1つとなっている.しかし,チオプリンへの治療感受性には個人差が大きく,患者によっては治療の中断や投与量の大幅な減量を必要とする場合がある.そのため,チオプリン感受性について患者要因の探索が行われてきており,欧米人ではチオプリン代謝酵素の1つであるチオプリンS-メチルトランスフェラーゼ(thiopurine S- methyl transferase:TPMT)の活性がその因子となっている.しかし,アジア人ではTPMT活性低下の頻度が低いため,他の遺伝要因の探索がゲノムワイド関連解析によって行われた.近年,NUDT15遺伝子多型がアジア人においてチオプリンによる骨髄抑制の重篤化に関連することが報告された.本稿では,NUDT15遺伝子多型によるチオプリン感受性変化と,そのメカニズムを示した論文について紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Relling M.V. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 93, 324-325 (2013).2) Yang S. K. et al., Nature Genet., 46, 1017-1020 (2014).3) Yang J. J. et al., J. Clin. Oncol., 33, 1235-1242 (2015).4) Moriyama T. et al., Nature Genet., 48, 367-373 (2016).
著者
塩見 めぐみ 田中 庸一 尾鳥 勝也
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-060, 2021 (Released:2021-09-15)
参考文献数
15

北里大学メディカルセンターでは,薬学実務実習に関するガイドラインを基に実践的な臨床対応能力が修得できる実習プログラムを考案し,2018年度より実習を開始した.本研究では,2018~2019年度に行った計6回のプログラムについて,教育効果に与えた影響を評価した.教育効果として,薬局および病院実習ともに終了した実習生62名を対象としたパフォーマンス評価の推移,アンケート調査結果を用いた.パフォーマンス評価11項目全てにおいて,評価は段階的に上昇し,11週目では,実習生の80%以上が,9項目で「3」または「4」の評価であった.病棟業務実践で主に評価する項目については,実習生の90%以上が,「3」または「4」の評価であった.アンケートより,各実習項目の満足度が95%以上で得られ,病棟業務については100%であった.今後は,得られた課題についての対策を具体的に検討し,実習生の臨床対応能力の向上に資するプログラムを構築していきたい.