著者
李 強 田中 良晴 田中 博司 三羽 信比古
出版者
学校法人物療学園 大阪物療大学
雑誌
大阪物療大学紀要 (ISSN:21876517)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.31-40, 2015

水素は、自然界にも生体にも最も豊富に存在するかつ最も単純な元素である。2007年、日本医科大学太田成男教授らは水素が抗酸化、抗アポトーシスの特性を有し、脳虚血及び再灌流障害を惹起させた動物実験においてショックに伴って生成するヒドロキシルラジカルから選択的に保護できることを見出していたので、治療用医療ガスや水素ナノバブル水は話題となった。この発見によって、水素医学分野は 2007 年以来急速に形成されてきた。本研究は、ビブリオメトリックスの研究手法を用い、2007 年 1 月〜2014 年 10 月に発表された 357 報 SCI(Science Citation Index)水素医学論文を分析して、論文の時系列的な質と量の趨勢を明らかにした。結果としては、基礎研究が占めた割合は多かったが、糖尿病、動脈硬化、高血圧、悪性腫瘍のような 70 種類以上に及ぶ疾患も研究対象となっていたことが分かった。臨床実験では 2013 年、大阪物療大学李と三羽らは、22 名褥瘡患者に一日 600 mL の水素ナノバブル水を経管胃内投与した結果、褥瘡サイズ縮小と患者の早期治癒退院平均日数を見出し、経管栄養法を介した水素水の摂取による臨床有効性は明らかにした。これから、有望な水素医学は様々な疾病の治療オプションの 1 つとして、基礎から臨床まで広範に研究されていくことが期待できる。
著者
李 強 田中 良晴 朝田 良子 三羽 信比古
出版者
大阪物療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

水素水(HW)を用い、損傷を与えたヒト培養細胞の移動能などを検証し、主に次の成果が得られた。1)スクラッチした皮膚線維芽細胞にHWと白金ナノコロイド(Pt-nc)を投与すると、HW群は48時間後糸状仮足を示し始め、また、HW+Pt-ncはBax/Bcl-2比を調節する可能性が示唆された。2)低濃度の固形シリカ吸蔵水素(H2-silica)がスクラッチした正常食道上皮細胞(HEEpiC)には微絨毛形成や移動能の活性化がみられ、アポトーシスの誘導効果も確認された。3)H2-silicaが食道扁平上皮癌細胞の移動を阻害し、高濃度のH2-silicaがHEEpiCに毒性効果をもたらすことが確認された。
著者
坪内 伸司 山本 章雄 松浦 義昌 田中 良晴 高根 雅啓 清水 教永
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、健康な成人男女を対象としバイオフォトンの日内変動や人間の健康状態をどの程度反映するか検討した。対象者個々の日内でのエネルギーフィールド指標は、全平均値で日内変動が認められた。また、負荷作業前後のエネルギーフィールド指標は、全平均値で有意な差(p<0.05)が認められた。POMSは、作業後に疲労、抑鬱、怒りの増加が認められた。バイオフォトンは、作業によるストレスを度反映し、新視点から健康状態の評価が期待される。
著者
松浦 義昌 清水 教永 眞来 省二 浜口 雅行 坪内 伸司 田中 良晴
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、身体障害者個々の疾患レベルに適した運動処方の実際について、3年間の継続運動が身体障害者にどのような影響をもたらすのかについて検討した。対象者は、骨形成不全、頸髄損傷、脳性麻痺の障害を有する3名の身体障害者で、年齢は35歳〜43歳の範囲である。1週間から10日に一度の頻度で、それぞれの疾患に適した運動処方を3年間継続して行った。運動処方実施中は、心拍数、酸素摂取量、主観的運動強度(RPE)、脳酸素飽和度(StO2)及びヘモグロビン量(Hb量)を連続記録し、運動前後には血圧、血中乳酸及び内省報告を記録した。いずれの被検者についても、運動処方3年目に心拍数-酸素摂取量の高い相関関係が認められた。心拍数とRPEの関係についても心拍数-酸素摂取量の関係同様に、運動処方3年目に高い相関関係が認められた。StO2及びHb量については、運動前安静時、運動中及び運動後のいずれの状態においても顕著な変化は認められなかった。運動前後の血圧は、運動後に拡張期、収縮期ともに高くなる傾向が認められた。血中乳酸は、運動前に比べ運動後におよそ4〜5mmol/mlの増加が認められた。運動後の内省報告では、いずれの対象者についても気持ちが良い等の報告を受けた。以上のことから、身体障害者における3年間の運動処方は、健常者の場合とは一部異なるものの身体障害者の生理心理に種々な影響を与え運動の習慣化という生活習慣の改善および呼吸循環器系機能の改善の可能性を示した。よって本研究で用いた運動処方は、身体障害者の生活習慣病予防やより積極的な健康生活の向上のための有益な処方の一つであると考えられる。