著者
野島 博 田中 誠司
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

窒素枯渇条件により減数分裂を誘導する転写カスケードに載っている制御因子遺伝子を重差分化法を適用することで多数クローニングし、meu(meiosis-dependetupregulatedgene)と命名した。それらは以下の3種類に分類されることが分かった。【encircled1】TypeI: Ohr(mitosis logphaseに相当する)ではホモ株もヘテロ株でも全く発現されていないもので真に減数分裂特異的発現がなされるもの。【encircled2】TypeII: Ohrでも少しではあるが発現がみられるもの。減数分裂以外でも何らかの役割を果たしている可能性がある。【encircled3】TypeIII: ノーザンブロットにおいて二本以上のバンドが見られ、そのうち一つのみがmeu遺伝子としての挙動を示すもの。類似の二種類のmRNAが別々に存在する場合、あるいは選択的スプライシングにより生成されるもののうち一つのみが減数分裂に特異的である場合などが考えられる。我々はこれら遺伝子群をque(quasi meu)と呼ぶことにした。クローン化したmeu遺伝子のうち興味深いものとしてDNA複製開始因子のひとつであるRF-C3(replication factor C subunit3)に類似したクローン(meul)がある。meulはRF-C3の持つ特徴的なモチーフを全て持つ新規の遺伝子である。我々はmeulがmitosisのS期とmeiosisのS期を峻別する機能を持つ、減数分裂前DNA合成を特徴づける複製因子ではないかと期待している。今後はこれらmeuゲノム遺伝子をさらに多くクローン化し、全塩基配列を決定するとともに遺伝子破壊を行って、四分子解析によって必須遺伝子であるかどうか、減数分裂前DNA合成期に影響するかどうか調べる。また実際にDNA複製に絡んでいるかどうか生化学的諸実験も行う積もりである。
著者
野島 博 木村 信也 鍋島 建太郎 田中 誠司
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本年度は、哺乳動物細胞および酵母より、以下に列挙するような細胞増殖を制御する新しい遺伝子を単離し、機能解析することで以下の諸点を明らかにした。l.細胞増殖を制御する新しい遺伝子を効率良く単離するために、高品質な差分化cDNAライブラリーを作製できる技術を開発した。それを用いてマウスのMITFの転写標的遺伝子を包括的に多数単離した。その中の一つであるGranzymeB遺伝子が実際にMITF転写標的であることを多方面から証明した。2.哺乳動物細胞のG1/S期での転写誘導に重要な役割を果たすE2F蛋白質の転写制御機構について、cdc2遺伝子とHsMCM遺伝子を用いて解析した。3.マウスのメラノーマの間(BL6-F10)の差分化cDNAライブラリーから単離したコネキシン26がfF10に筋肉注射によってさえ肺に転移するBL6レベルの強い浸潤・転移能を付与することを見出した。4.初代培養細胞でのみ発現している遺伝子群を差分化cDNAライブラリー作製により多数単離し、そのうちルミカンが実際にK-rasとv-srcの癌化に対する抑制機能を有することを証明した。5.出芽酵母のNIKIは発現がGIIS期でピークを持つ細胞周期性振動を繰り返すが、これがG2/M期遷移の制御のみでなく、S期開始制御も行うことを我々は新たに見出したので、その分子制御機構を詳しく解析した。6.分裂酵母のrfc3+遺伝子の温度感受性変異株を数株単離し、それらの一つであるrfc3-1変異を用いて詳細な解析を行った結果、Rfc3はDNA複製だけでなく、DNA複製チェックポイントとDNA損傷チェックポイントにおいても重要な機能を持つことを明らかにすることができた。