著者
御厨 貴 野島 博之
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.28, pp.141-172, 1986

本稿は,東京都西端のー画を占める檜原(ひのはら)村の選挙の歴史を鳥瞰図的に考察したものである。期間は昭和34年から同58年までの24年間,計7回の選挙を扱っている。おそらく,本稿の最大の弱点は,五日市町に木造の小さな印刷所兼販売店を構える新五日市社の週刊「秋川新聞」に,執筆の主材料が限定されてしまっている点であろう。当然の帰結として,人に誇示できるような天賦の素質を授かった訳でははないのに,筆者は,主要な部分で、人間の知力の一構成要素に全幅の信頼を置かざるをえなかった。その構成要素とは想像力である。新聞と想像力ーこの困難な条件下においても,筆者は能う限りの奮戦をしてみようとは試みた。そこには,それなりの理由もある。新聞は,日本の学的世界の中で,常に副次的な資料として遇されがちではなかったろうか。想像力は,歴史的片々の前に,ほとんど絶望的な沈黙を強いられがちではなかったか。そのような不幸な者たちを率いて,筆者に一体何ができるのかを確かめてもみたかったのである。できばえは,案の上よくない。このような代物がよく調査され,構成もしっかりした論文の聞に挟まれるのかと思うと,恥ずかしさで身体が火照ってしまう。全体として素人のレポートの域をでず,学術論文らしい体裁を整えてもいないのであるから,本稿を通じて,読み手の側にイマジネーション・ウォーズを換起するような箇所が一つでもあれば,それでよしとしなくてはなるまい。以上,これは果して要約にはなっていないが,筆者の意とするところを少しでも汲みとって頂ければ幸いである。
著者
一場 香理 礒田 昭弘 野島 博 高崎 康夫
出版者
日本作物学会関東支部
雑誌
日本作物学会関東支部会報 5 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
pp.65-66, 1990-12-06 (Released:2017-08-24)

Eleusine属にはE. kigeziensis、E. tristachya等の多年生種とE. coracana(シコクビエ)、E. indica、E. multiflora等の一年生種がある。ここではシコクビエ9系統を出穂期以降、自然条件、自然日長・25/20℃、24h日長・25/20℃で栽培したときの生育と生存期間について報告する。
著者
野島 博 藪田 紀一 奥崎 大介 内藤 陽子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

癌細胞が悪性化するとは「癌細胞が細胞分裂ごとに娘細胞への染色体不均等分配を高頻度に起こす」即ち「染色体不安定性」という特徴を獲得することにある。その細胞・分子レベルでの主要な原因として「中心体の過剰増幅とM期チェックポイントの制御異常」が知られている。本研究ではM期で中心体から染色体へ移行する「中心体キナーゼ」であるLats1/2がALB経路とCLP経路を、GAKがGBC経路を形成することで染色体不安定性を統御するという我々の独自な発見を展開した。そのために、Lats1/2、GAK、Cyclin G1/G2欠損マウスやTALEN/Crispr系を用いたLats2欠損癌細胞株を作製して活用した。
著者
野島 博 田中 誠司
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

窒素枯渇条件により減数分裂を誘導する転写カスケードに載っている制御因子遺伝子を重差分化法を適用することで多数クローニングし、meu(meiosis-dependetupregulatedgene)と命名した。それらは以下の3種類に分類されることが分かった。【encircled1】TypeI: Ohr(mitosis logphaseに相当する)ではホモ株もヘテロ株でも全く発現されていないもので真に減数分裂特異的発現がなされるもの。【encircled2】TypeII: Ohrでも少しではあるが発現がみられるもの。減数分裂以外でも何らかの役割を果たしている可能性がある。【encircled3】TypeIII: ノーザンブロットにおいて二本以上のバンドが見られ、そのうち一つのみがmeu遺伝子としての挙動を示すもの。類似の二種類のmRNAが別々に存在する場合、あるいは選択的スプライシングにより生成されるもののうち一つのみが減数分裂に特異的である場合などが考えられる。我々はこれら遺伝子群をque(quasi meu)と呼ぶことにした。クローン化したmeu遺伝子のうち興味深いものとしてDNA複製開始因子のひとつであるRF-C3(replication factor C subunit3)に類似したクローン(meul)がある。meulはRF-C3の持つ特徴的なモチーフを全て持つ新規の遺伝子である。我々はmeulがmitosisのS期とmeiosisのS期を峻別する機能を持つ、減数分裂前DNA合成を特徴づける複製因子ではないかと期待している。今後はこれらmeuゲノム遺伝子をさらに多くクローン化し、全塩基配列を決定するとともに遺伝子破壊を行って、四分子解析によって必須遺伝子であるかどうか、減数分裂前DNA合成期に影響するかどうか調べる。また実際にDNA複製に絡んでいるかどうか生化学的諸実験も行う積もりである。
著者
野島 博 木村 信也 鍋島 建太郎 田中 誠司
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本年度は、哺乳動物細胞および酵母より、以下に列挙するような細胞増殖を制御する新しい遺伝子を単離し、機能解析することで以下の諸点を明らかにした。l.細胞増殖を制御する新しい遺伝子を効率良く単離するために、高品質な差分化cDNAライブラリーを作製できる技術を開発した。それを用いてマウスのMITFの転写標的遺伝子を包括的に多数単離した。その中の一つであるGranzymeB遺伝子が実際にMITF転写標的であることを多方面から証明した。2.哺乳動物細胞のG1/S期での転写誘導に重要な役割を果たすE2F蛋白質の転写制御機構について、cdc2遺伝子とHsMCM遺伝子を用いて解析した。3.マウスのメラノーマの間(BL6-F10)の差分化cDNAライブラリーから単離したコネキシン26がfF10に筋肉注射によってさえ肺に転移するBL6レベルの強い浸潤・転移能を付与することを見出した。4.初代培養細胞でのみ発現している遺伝子群を差分化cDNAライブラリー作製により多数単離し、そのうちルミカンが実際にK-rasとv-srcの癌化に対する抑制機能を有することを証明した。5.出芽酵母のNIKIは発現がGIIS期でピークを持つ細胞周期性振動を繰り返すが、これがG2/M期遷移の制御のみでなく、S期開始制御も行うことを我々は新たに見出したので、その分子制御機構を詳しく解析した。6.分裂酵母のrfc3+遺伝子の温度感受性変異株を数株単離し、それらの一つであるrfc3-1変異を用いて詳細な解析を行った結果、Rfc3はDNA複製だけでなく、DNA複製チェックポイントとDNA損傷チェックポイントにおいても重要な機能を持つことを明らかにすることができた。
著者
礒田 昭弘 Aboagye Lawrence Misa 野島 博 高崎 康夫
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.700-706, 1996-12-01
被引用文献数
2

ラッカセイの葉の調位運動の品種間差異について, 葉面受光量, 葉温及び蒸散速度の点から検討した. 5品種(千葉半立, タチマサリ, 関東56号, バレンシア, 金時)を圃場条件下で栽培し, 地上部最盛期に防雀網で群落最上層葉を抑え, 自由に調位運動を行っている無処理区の小葉面受光量と葉温の日変化を比較した. また, 熱赤外線画像測定機で各区の群落熱画像を撮影するとともに, 無処理区の個体を対象に蒸散速度, 気孔抵抗を測定した. タチマサリ, バレンシア, 金時の3品種では, 無処理区の葉温は気温とほぼ同様に推移したが, 処理区の葉温は気温より高く推移した. 千葉半立, 関東56号においては, 葉温は無処理区で気温と同様かやや高く推移したが, 処理区では午後から気温より低くなった. 受光量は曇天日には関東56号, バレンシア, 金時で, 晴天日ではタチマサリ, 関東56号で無処理区が有意に大きくなり, 両日とも関東56号が最大の受光量を示した. 蒸散速度は千葉半立が最大で, 次いでバレンシア, 関東56号, タチマサリ, 金時の順で, 気孔抵抗とは負の相関関係があった. 熱赤外線画像測定による群落の葉温はタチマサリ, 金時で高くなり, 千葉半立, 関東56号で低い値を示した. 以上のことから, 蒸散能力の高い品種は太陽光線を避ける運動の程度が小さいことから受光量が大きくなり, 蒸散能力の低い品種は太陽光線を避ける運動により葉温を下げ, 水分ストレスを回避している傾向がうかがえた.