著者
田中 隆一郎 下坂 国雄
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.577-582, 1982-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
14
被引用文献数
10 16

特別養護老人ホーム黒潮園に在住する“ほぼ寝たきり”の高齢者 (平均年齢77.9±8.1歳) 57例を対象に排便傾向の調査とビフィズス菌醗酵乳 (以下ビ菌醗酵乳) の飲用に伴う排便傾向の改善をしらべた. 対象者57例中40例 (70%) は2日に1回以下の排便回数であった. また, 便秘薬常用者は22例 (39%) にも認められ, その排便回数は1週間当り2回以下であった.ビ菌醗酵乳100mlを連日20日間飲用させることにより, 自然排便者9例の排便回数は, 飲用前の5.7±3.3回/10日間 (平均±SD) から, 前半10日間の飲用で7.0±2.5回 (P<0.05), 後半10日間では8.1±1.6回 (P<0.01) のように増加した.便秘薬常用者10例でも, 飲用前の2.1±0.3回/10日間から, 前半10日間飲用で3.8±1.9回, (P<0.05), 後半10日間では4.4±1.8回 (P<0.01) のように増加した. 一方, 対照とした未醗酵乳では, 自然排便者群で後半10日間の飲用期にのみ有意の増加を認めた.上記のビ菌醗酵乳の飲用効果は, 自然排便者の対象を26例に増やしても, 飲用前10.8±3.8回/20日間, 飲用中13.1±3.9回 (P<0.001), 飲用後10.8±3.5回のように確認された.以上の結果から,“ほぼ寝たきり”の高齢者では便秘傾向が顕著であること, ビ菌醗酵乳の飲用によりこれらの排便傾向が明らかに改善されることがわかった.