著者
小澤 和夫 白石 久富 大野 恭子 西川 隆 田伏 薫
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.21-25, 1990-01-10 (Released:2018-10-25)

顔面運動においてMotor Impersistence(MI)が認められる患者では,車椅子駆動のような複合的な動作に関して,健側上下肢いずれかの肢における連続動作や上下肢の同時動作においても障害が認められる。この病態をより要素的に分析する目的で,手足の等尺性運動の維持能力を検討した。MI陽性左片麻痺群(6例)と対照群であるMI陰性右・左片麻痺群(各7例)の3群について,指腹つまみ単一動作,踏みつけ単一動作,指腹つまみと踏みつけの同時動作,の3種類の動作を各20秒間行わせ,圧力とその変動および保持時間を調べ各群を比較検討した。その結果,顔面運動でみられるような動作の中断はみられなかったが,上肢ではMI陽性左片麻痺群の圧力が他の群に比べ,時間の経過とともに有意に減衰していた。このことは,顔面と上肢および下肢の運動制御の水準の段階的な差を反映しており,より意図的な努力を要する動作において,定常的な運動の維持が困難になるものと考えられる。
著者
大野 恭子 浦上 郁子 渡辺 真理 西川 隆 田伏 薫 柏木 敏宏
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.243-250, 1987 (Released:2006-11-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

失語症者を対象に, (1) 動物や物品の名称とそれに対応する擬音語の聴覚理解・語想起を比較し,更に, (2) 実際の音響 (環境音) の認知ならびに環境音からの擬音語・名称の想起を調べた.擬音語と名称の成績の間には,聴覚理解・想起とも正の相関が認められた.聴覚理解には失語症型による有意な差はなかったが,想起については, Fluent 群は Nonfluent 群に比べ擬音語が名称より有意に困難であった.また,環境音の認知に障害を示す症例があり,環境音と言語音の認知の成績の間には正の相関が認められた.擬音語が音と意味の繋がりがより直接的であるという特性にもかかわらず名称よりかえって想起が困難な傾向を示した要因として,擬音語も社会的な記号体系である言語の一部で,普通の名称と共通の音韻処理過程を経ること,擬音語の使用頻度の問題,及び失語症者は環境音とその対象との意味的連合に障害が及いでいる可能性があることを考えた.