著者
浜田 信夫 田口 淳二 佐久間 大輔
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History (ISSN:00786675)
巻号頁・発行日
no.77, pp.29-36, 2023-03-31

博物館の乾燥菌類標本のカビ汚染について調査を行ったところ,カビはDNAとして検出されるが,現在生存していないことが明らかになった.そこで,過去に採集,乾燥,標本の作製,保存のどの段階で,どの程度カビ汚染が起きたかについて,博物館に収蔵されているAmanita属36標本のカサの部分を用いて検証した.手法としては,2種のカビの作成したプライマーを用いて,各検体のカビ数をリアルタイムPCRで測定し,その胞子数を調査した.得られた結果は次の通りであった.①両種の胞子数は標本ごとに桁違いのバラツキがあった.②検出されたA. penicillioidesの胞子数は,標本の乾重量100 mg当たり平均約1000個, Eurotium sp. は約7個であった.③結果は,採集時からの様々な過程で,湿り気が発生し,標本上にカビが一時的に発生したことを示唆している.なお,産出された胞子数は標本の古さ,あるいは目視でのカビの有無とは関係ないので,保存前の段階で汚染がしばしば起きたと推測される.