著者
田坂 健 東恩納 司 三上 奈緒子 日野 隼人 大川 恭昌 武本 あかね 河崎 陽一 村川 公央 北村 佳久 千堂 年昭
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.638-643, 2017-10-31 (Released:2017-10-31)
参考文献数
14

目的:薬剤師が集中治療室に常駐し,積極的に塩酸バンコマイシン(以下,VCM)の治療薬物モニタリング(以下,TDM)介入を行うことによる効果を明らかにする。方法:薬剤師が常駐する前後で2群に分け,レトロスペクティブに調査を行った。結果:薬剤師の常駐によりVCM血中濃度測定実施率は86.2%から96.5%,シミュレーション解析実施率は24.1%から95.4%へ有意な増加を認めた。血中濃度分布は,トラフ値10μg/mL 未満の割合が24.1%から15.1%へ有意に減少した。一方でトラフ値20 〜25μg/mLの割合が3.7%から15.7%へ有意に増加していた。また,腎障害の発生率は6.5%から2.1%へ減少傾向を示した。結論:ICUにおいて専任薬剤師がVCMのTDM介入を行うことで,TDM実施率の向上とトラフ値が適正化され,VCM適正使用に貢献できることが示唆された。
著者
田坂 健
出版者
岡山大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

研究目的本研究は抗菌薬によるせん妄メカニズムを解明し手術後あるいは感染症患者におけるせん妄管理に資する基盤データの構築を目的とした。方法実験にはICR系雄性マウスを用いた。マウスにLPS(300μg/kg)を腹腔内投与し、その24時間後に行動薬理学的検討を行う。行動薬理学的検討は、ジアゼパム(0.3mg/kg, DZP)およびペントバルビタール(40mg/kg, PB)を腹腔内投与し、PB誘発睡眠の睡眠潜時および睡眠持続時間を評価した。本研究では抗菌薬としてミノサイクリン(50mg/kg, MINO)を用い、LPS投与前および投与後にMINOを投与することによる睡眠潜時および睡眠持続時間への影響を評価した。なお、本研究は申請者所属施設の動物実験委員会の承認を得て行った。主要な研究成果LPS投与マウスに単独で無作用量のDZPおよびPBを投与した場合、DZP非投与マウスあるいはLPS非投与マウスと比較して有意に睡眠持続時間が延長した。このLPS、DZPおよびPB投与マウスの睡眠潜時および睡眠持続時間に対するMINOの影響を評価した。まず、MINO後投与としてLPS投与直後、1、2および4時間後にMINOを投与した場合、ペントバルビタールによるマウスの睡眠潜時に影響はなかったが睡眠持続時間は有意に短縮した。一方、前投与としてLPS投与48, 36, 24, 12時間前、投与直前およびLPS投与12時間後にMINOを投与した場合、睡眠持続時間が有意に延長した。MINOは中枢および末梢神経に存在するグリア細胞のうち、ミクログリアの活性化を抑制することが知られている。ミクログリアは神経の炎症にも深く関与することから、現在ミクログリアの活性化に着目して行動実験後の摘出脳サンプルを用いて検討中である。