著者
河野 健一 矢部 広樹 森山 善文 森 敏彦 田岡 正宏 佐藤 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.635-641, 2015 (Released:2015-11-27)
参考文献数
28
被引用文献数
5 2

血液透析患者の転倒リスクを予測するうえで有用な指標を明らかにする. 歩行可能な血液透析患者123例を対象に転倒の発生を主要アウトカムとする1年間の前向きコホートを実施した. 身体パフォーマンスに関する指標であるshort physical performance battery (SPPB), 筋力, 筋肉量に加え, 栄養状態の指標や透析に関連する指標の転倒に対するハザード比を算出した. 観察期間内に38名 (31%) が転倒し, 透析関連低血圧 (intra-dialytic hypotension : IDH) が独立した危険因子として抽出された (HR=2.66, p=0.01, Log rank test p=0.002). また, SPPB 7点以下は11点以上と比較して有意に転倒のリスクが高かった (HR=2.41, p=0.02, Log rank test p=0.021). IDHやSPPBの低下は透析患者の転倒リスクを予測するうえで有用な指標となることが明らかとなった.
著者
田岡 正宏 山本 千恵子 金 成泰 高杉 昌幸
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.13, pp.1543-1548, 2001-12-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
12

血液透析濾過 (HDF) は慢性腎不全患者体内に蓄積する大分子物質の除去を目的とするが, 液置換が大量になるほど血清アルブミンの漏出が過大となる傾向がある.今回, 定圧濾過におけるアルブミン漏出の動態を調べる目的で, 5名の安定維持血液透析患者にポリスルフォン膜を使用し, 血流250ml/分で血液透析およびon-line HDFを施行した. 濾過条件は前希釈法および後希釈法それぞれにおいて膜間圧力差 (TMP) を50, 150, 250, 350mmHgに設定し, 5時間の治療時間中, 経時的に透析排液を採取しアルブミン濃度を測定した. いずれの濾過圧においてもアルブミン漏出は濾過開始時に最大となり, 60分の経過で急峻に低下し, その後は終了まで漸減傾向を示した. 同じ濾過圧であれば後希釈の方が, 前希釈よりもアルブミン漏出量が大きかった. また, 濾過圧が大きいほどアルブミン漏出量は有意に増大した. ただし, 後希釈HDFにおいてTMPを350mmHgに設定した場合は高度の膜劣化による細孔狭小化により, アルブミン損失は150および250mmHgに設定した場合や前希釈法で同じ350mmHgに設定した場合よりも有意に低下した. アルブミン損失を制御する観点から, 漏出が過大となる治療開始後5分間は濾過を行わず, その後60分かけて濾過速度ないしTMPを漸増させ, 以後終了時まで最高の濾過量を確保できる条件に設定すれば, 大量液置換を行いつつ, 1回治療あたりのアルブミン損失量を4g以下に抑えることができる.
著者
江口 圭 宮尾 眞輝 山田 祐史 金野 好恵 金子 岩和 峰島 三千男 田岡 正宏 佐藤 隆 萩原 雄一 道脇 宏行 英 理香 細谷 陽子 田尾 知浩 土田 健司 水口 潤 谷川 智彦 宮本 照彦 森石 みさき 川西 秀樹 中川 章郎 岩隈 加奈子 吉田 友和 今井 陽子 小畑 日出登 松嶋 哲哉
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.695-703, 2009-09-28 (Released:2009-11-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1 1

全自動透析装置(GC-110N,JMS社製)の補液モードを利用した,逆濾過透析液による間歇補液血液透析(intermittent infusion HD, I-HD)を考案し,その臨床効果を多施設共同研究にて評価したので報告する.対象は維持透析患者20例で,通常の血液透析(normal HD, N-HD)とI-HDを同曜日に一回ずつ施行し,クロスオーバー試験にて評価した.検討項目は除去率,クリアスペース,クリアランスとし,尿素,クレアチニン,尿酸,無機リン,β2-microglobulin(β2-MG),α1-microglobulin(α1-MG),アルブミンの7種の溶質について検討した.また,透析中の循環血液量をヘマトクリットモニタにて,患者末梢血流量をレーザー血流計にて連続モニタリングし,間歇補液の有無との関係を調べた.結果として,すべての患者について間歇補液に同期した循環血液量および組織血流量の増加が観察された.治療時間平均の循環血液量減少率は,除水量がほぼ同等であるにもかかわらず,I-HDの方がN-HDにくらべ有意に低値であった.また,除去率に差違は認められなかったが,クリアスペースの平均値は全ての溶質でI-HDがN-HDにくらべ高値を示し,無機リン,α1-MGでは有意に高値であった.この結果は末梢循環が良好に保たれることにより,物質移動の推進力となる毛細血管の有効表面積やプラスマリフィリングが保持されたことにより,組織間液中に分布する溶質を効率よく移動・除去させたことによるものと考えられた.一方,α1-MGのクリアランスは,1hr値にくらべ4hr値でN-HD:73%低下したのに対し,I-HD:30%の低下にとどまった.これは間歇的な逆濾過補液により,膜への蛋白のファウリングが軽減されたため,溶質透過性が保持されたものと推察した.全自動透析装置の補液モードを利用した間歇補液血液透析は,安全かつ確実に施行可能であり,透析中の末梢循環動態の是正,患者からの溶質除去特性の改善に有用な治療であることが明らかとなった.
著者
峰島 三千男 江口 圭 宍戸 寛治 高橋 進 久保 司 川口 洋 蔀 幸三 柴垣 圭吾 須賀 喜一 長尾 尋智 高田 幹彦 田岡 正宏 佐藤 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.351-360, 2015 (Released:2015-06-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1

透析中の末梢循環障害是正や急激な血圧低下防止を目的に間歇補充型血液透析濾過 (intermittent infusion hemodiafiltration : I-HDF) が考案された. 今回われわれは逆濾過透析液を用いたI-HDFの臨床効果を前希釈法On-line HDF (以下Pre-HDF) と比較するため, 前向き多施設共同臨床研究を実施した. 文書にて同意が得られた患者を同一施設内で2群に割付けし, 並行群間比較を行った. その際, ① 年齢 (±5歳), ② 基礎体重 (±5kg), ③ 糖尿病の有無をマッチングさせ, 36例 (18ペア) を対象とし臨床症状, QOL, 溶質除去などの観点から検証した. その結果, 臨床症状, QOLにおいて両群に有意差は認められなかった. 血液透析からの変更後, I-HDF群, Pre-HDF群とも治療が継続するにつれて収縮期血圧減少率の低下, 処置発生率低下傾向がみられた. また, I-HDFはPre-HDFに比べ中・大分子溶質の除去には劣るもののアルブミン漏出量の少ない溶質除去特性が確認された.