著者
寺井 仁 三輪 和久 田嶋 あゆみ
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.37-49, 2014-08-31 (Released:2014-10-07)
参考文献数
27

本研究では,マジックのトリックを解決する課題を対象に,(a)予期しない現象の原因同定に加齢が及ぼす影響,および(b)高齢者同士の協同が原因同定に与える効果について実験的な検討を行った.実験の結果,高齢者の原因同定のパフォーマンスは若齢者に比して低下することが示され,トリックが存在する箇所および存在しない箇所の弁別が困難であることが示された.一方,すでに得られた情報を起点として原因を探るという問題解決方略は高齢者においても保持されていることが示された.また,高齢者が協同して助け合うことにより,原因同定のパフォーマンスの向上が認められ,そのプロセスにおいて,得られた情報を起点とした原因の推測がより改善され,トリックが存在する箇所への疑いがより強められることが明らかとなった.しかしながら,トリックが存在しない箇所に対する疑義の棄却に関しては協同による助け合いの効果は認められなかった.