- 著者
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西条 寿夫
田渕 英一
田村 了以
- 出版者
- 富山医科薬科大学
- 雑誌
- 重点領域研究
- 巻号頁・発行日
- 1996
本研究では,海馬体における能動的な場所応答[特定の場所(場所フィールド)におけるニューロン活動の上昇]の形成機構を明らかにするため,課題要求性の異なる2つの場所学習課題(RRPSTおよびPLT1課題)を遂行しているラットの海馬体ニューロン活動を記録し,場所と報酬,および歩行移動に関する物理的諸因子(歩行移動のスピード,方向,回転角度)に対する海馬体ニューロンの連合応答性を詳細に解析した。RRPST課題では,ラットは,円形オープンフィールド内をランダムに移動することにより不特定の場所で,PLT1課題では,フィールド内に2つの報酬領域を設定し,その間を往復することにより,それぞれ2つの報酬領域で脳内自己刺激報酬を獲得できる。すなわち,RRPST課題と比較して,2つの報酬領域を結ぶ一定の軌跡上を移動するPLT1課題では,歩行移動の物理的諸因子に関する情報がより重要になる。海馬体から37個の場所ニューロンを記録し,PLT課題ではRRPTS課題と比較して,すべての物理的因子に対するニューロンの選択性が増加していることが判明した。以上の結果は,課題要求性により,入力情報の特定のパラメータに対する海馬体ニューロンの応答選択性が増加し,より重要な情報に応答性が能動的にシフトしていることを示唆している。さらに,31個の海馬体ニューロンに対して,2つの報酬領域のうちの1つの場所を無報酬にするPLT2課題をテストした結果,6個のニューロンで,報酬の変更により場所フィールドが移動することが判明した。以上の結果は,海馬体では,1)場所フィールド内における能動的な入力情報の選択,および2)場所フィールド自体の可塑的な変化(Remapping)により,海馬体に入力される広範な感覚情報が処理されていることを示唆している。