著者
道上 真有 田端 理一 中村 勝之
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.259-268, 2010

本研究は,ロシア政府が2006年から実施した住宅政策の効果に関する中間的評価を行っている。ここでは,住宅政策が国民の住宅購入可能性(affordability)にどのような影響を与えたのかという問題を中心に,ロシア連邦と3つの主要都市,およびモスクワ市の9行政区におけるaffordabilityを計測した。その主要な結果は,2007年のロシアで住宅ローンを利用して住宅を購入できる人口割合は住宅政策実施の前後で2割程度とあまり変化しなかった。また,住宅ローン融資目標額や住宅弱者に対する補助受給世帯数も目標値を下回っていた。他方,モスクワ市行政区におけるaffordability値の計測,およびaffordabilityを規定する要素と人口流入との相関を推計した結果,行政区によっては価格高騰地域でも住宅政策実施後にaffordabilityの値が向上し,さらにドーナツ化現象の影響が加わっている可能性が示唆された。