著者
羽地 俊樹 菅森 義晃 田邉 佳紀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.295-306, 2022-12-08 (Released:2022-12-08)
参考文献数
71
被引用文献数
2

鳥取市国府町宮下に露出する中新統鳥取層群岩美層の泥岩は,保存の良い浅海性の魚類化石を多産する.この泥岩は鳥取~北但地域の前期中新世末期の海進の最初期の地層であり,その堆積年代は山陰東部の海進史を検討する上で重要である.従来は泥岩中に挟まる凝灰岩から得られた16.8±0.8 Ma(1σ)のジルコンのフィッション・トラック年代が堆積年代として参照されていたものの,その年代値は不確かさが大きかった.そこで本研究では,先行研究と同一のマウント上のジルコンの年代をU-Pb法で再検討した.その結果,中新世の年代を示すコンコーダントな27粒子から17.4±0.2 Ma(2σ)の加重平均238U-206Pb年代を得た.この年代値は,従来の山陰東部の中新統の海成層の証拠よりも40万年ほど古い.中新統の岩相や古流向から古地理を推定すると,宮下地域は鳥取~北但地域の一連の堆積盆地内の低地に位置していたと考えられ,より早期に海水の影響を被る環境に変化したのだろう.
著者
田邉 佳紀 小野寺 麻由 中務 真人 國松 豊 仲谷 英夫
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.4, pp.167-181, 2020-04-15 (Released:2020-07-31)
参考文献数
36
被引用文献数
1

アフリカヨシネズミ(齧歯目,ヨシネズミ科)は二種の現生種がアフリカ・サハラ以南に生息している.先行研究では,現生のヨシネズミ属はその化石記録からアフリカの後期中新世末に出現したと考えられていた.日本-ケニア調査隊はケニア北部に分布する上部中新統ナカリ層(約10Ma)からヨシネズミ属の新種Thryonomys kamulai, sp. nov.を発見した.筆者らは頬歯化石を基に本種の記載を行い,ヨシネズミ属の中では小型で,また固有の稜縁歯(lophodonty)を有することが特徴づけられた.この発見により,ヨシネズミ属の初産出記録が後期中新世の約10Maに更新され,彼らは少なくとも10Ma以前にアフリカに生息していたことが考えられる.