著者
菅森 義晃 桑原 希世子 竹村 静夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.533-550, 2023-10-28 (Released:2023-10-28)
参考文献数
110

丹波-篠山地域には超丹波帯のペルム紀-三畳紀中期地質体,丹波帯の三畳紀後期-ジュラ紀地質体および白亜系陸成相の篠山層群等が分布している.篠山地域(兵庫県の丹波市南東部および丹波篠山市西部)の超丹波帯味間層はかつてペルム紀の地層を不整合に覆う中生界と考えられていたが,近年,ペルム紀の地層であることが明らかとなった.青垣地域(丹波市北部)に分布するチャート-砕屑岩シークエンスは,超丹波帯がペルム紀に形成された付加複合体と解釈できる根拠の1つである.また,超丹波帯が篠山層群に不整合で覆われることは,超丹波帯・丹波帯の地質構造を支配する正立褶曲の形成時期を決定する上で極めて重要な事象である.一方,菟原地域(京都府福知山市南東部)の丹波帯にはパンサラッサの遠洋深海相であるペルム系-三畳系境界が存在し,これについて古生物学的検討や地球化学的検討がなされてきた.本巡検において,これらの中・古生界の露頭の一部を紹介し,ペルム紀から白亜紀にわたる地質構造発達史やペルム紀から三畳紀における環境変動について理解を深めたい.
著者
羽地 俊樹 菅森 義晃 田邉 佳紀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.295-306, 2022-12-08 (Released:2022-12-08)
参考文献数
71
被引用文献数
2

鳥取市国府町宮下に露出する中新統鳥取層群岩美層の泥岩は,保存の良い浅海性の魚類化石を多産する.この泥岩は鳥取~北但地域の前期中新世末期の海進の最初期の地層であり,その堆積年代は山陰東部の海進史を検討する上で重要である.従来は泥岩中に挟まる凝灰岩から得られた16.8±0.8 Ma(1σ)のジルコンのフィッション・トラック年代が堆積年代として参照されていたものの,その年代値は不確かさが大きかった.そこで本研究では,先行研究と同一のマウント上のジルコンの年代をU-Pb法で再検討した.その結果,中新世の年代を示すコンコーダントな27粒子から17.4±0.2 Ma(2σ)の加重平均238U-206Pb年代を得た.この年代値は,従来の山陰東部の中新統の海成層の証拠よりも40万年ほど古い.中新統の岩相や古流向から古地理を推定すると,宮下地域は鳥取~北但地域の一連の堆積盆地内の低地に位置していたと考えられ,より早期に海水の影響を被る環境に変化したのだろう.
著者
竹村 静夫 竹村 厚司 植野 輝 菅森 義晃 古谷 裕
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.2, pp.117-125, 2018-02-15 (Released:2018-05-30)
参考文献数
38
被引用文献数
2

中~後期ペルム紀に形成されたと考えられる超丹波帯上月層は,その一部にデボン紀のチャート層を含むことが判明した.このチャート層は玄武岩類とともに産し,磁鉄鉱の濃集層を頻繁に挟在する.磁鉄鉱濃集層を含むチャートからは,放散虫化石Holoeciscus foremanaeなどが産出し,その年代は後期デボン紀Fammenian期である.これは中国地方から産する化石として最も古い年代であるとともに,日本列島の付加体中に含まれる異地性岩体としては,東北地方の根田茂帯のチャートとならんで最も古いことを示す.
著者
菅森 義晃 池内 萌加 佐野 円香 景山 直樹 小玉 芳敬
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.45-60, 2023-01-15 (Released:2023-02-21)
参考文献数
53

鳥取県東部の白兎海岸の気多岬および淤岐ノ島に露出する鳥取層群の地質調査および安山岩のK-Ar年代を測定した.気多岬には鳥取層群八頭層河原火山岩部層に帰属する両輝石安山岩が露出し,その石基中の斜長石のK-Ar年代は18.3±0.6 Maであった.絶対年代を比較すると,先行研究で指摘された河原火山岩部層が北但層群の養父亜層群八鹿層に対比される考えは支持される.淤岐ノ島に露出する鳥取層群は岩美層に帰属するとみられ,礫岩層を主体とし,河川環境下での火山活動の激化による堆積とその後の火山活動の鎮静化による斜面変形の一連の環境変化を記録した堆積物,広義のギルバート型ファンデルタの一部に比較できる地層を有する.広義のギルバート型ファンデルタが示す古流向は現在の方位で南西方向であったため,東北東方向に陸地が存在したとする考えと調和的である.これらの知見は日本海形成初期における古地理の復元に有用なデータとなりうる.
著者
竹村 静夫 菅森 義晃 鈴木 茂之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.Supplement, pp.S123-S137, 2009 (Released:2012-01-26)
参考文献数
47
被引用文献数
2

岡山県東部から兵庫県西南部には舞鶴帯と超丹波帯を構成する地層・岩石が広く分布する.舞鶴帯の主体をなすペルム系舞鶴層群は,その岩相と層序から付加体とみなすことは難しいが,地理的にはペルム紀の付加体と解釈される秋吉帯と超丹波帯の構成岩類に挟まれて分布している.このように中国地方東部から近畿地方北部の西南日本内帯には,ほぼ同年代でかつ性格の異なる地帯が狭い地域内に並列して分布する.この見学コースでは,ともにペルム紀の陸源砕屑岩を主体とする舞鶴層群と超丹波帯の上月層,舞鶴層群を不整合に覆う三畳系福本層群など,舞鶴・超丹波両帯に属する地質体の岩相や地質構造等を観察する.そして,それらが堆積・形成されたテクトニクスの重要性を再確認したい.
著者
菅森 義晃
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.6, pp.390-406, 2006 (Released:2006-10-12)
参考文献数
48
被引用文献数
12 9

本論では, 層序や構造に不明な点が多かった京都西山地域の中・古生界の層序区分を行った.研究地域の中・古生界は構造的上位の高槻層(再定義)と島本層(新称)及び下位の丹波帯に区分される.年代未詳とされた従来の高槻層は, 砕屑岩主体の上部ペルム系高槻層と中部三畳系島本層に区分されることが明らかになった.一方, 丹波帯は構造的上位から本山寺コンプレックス(再定義), 出灰コンプレックス(再定義)及び田能コンプレックスに細分される.本山寺コンプレックスから三畳紀新世前期, 出灰コンプレックスから三畳紀新世後期及び田能コンプレックスからジュラ紀古世を示す放散虫化石が, それぞれの砕屑岩から産出する.これらの丹波帯の各コンプレックスはその層相及び構造から付加複合体と判断され, 丹波帯の付加・形成が三畳紀新世前期には始まっていたと考えられる.
著者
亀高 正男 菅森 義晃 石田 直人 松井 和夫 岸本 弘樹 梅田 孝行 東 篤義 山根 博 杉森 辰次 魚住 誠司 永田 高弘 松場 康二 桑島 靖枝 岩森 暁如 金谷 賢生
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.11, pp.793-820, 2019-11-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
152
被引用文献数
1

舞鶴-小浜地域の5万分の1精度の地質図を新たに作成し,上林川断層の破砕帯の観察結果などと合わせて,超丹波帯と丹波帯の地質構造発達史を検討した.超丹波帯は後期ペルム紀〜三畳紀(?)付加体の上月層・大飯層・氷上層に,丹波帯はジュラ紀付加体の周山・雲ヶ畑・灰屋・鶴ヶ岡・由良川の5つのコンプレックスと古屋層に区分される.これらの地質体は衝上断層によって境され,大局的には北に向かって構造的上位かつ古い地質体が分布するパイルナップ構造を形成している.超丹波帯および丹波帯は東西~北西-南東走向で西〜北西に傾斜した軸を持つ半波長数kmの褶曲構造を形成している.この褶曲構造を切って北東-南西方向に,左横ずれカタクレーサイト帯を伴う地質断層としての上林川断層が延びている.活断層としての上林川断層は右横ずれ成分が卓越し,より古い地質断層の一部が横ずれインバージョンによって再活動していることが判明した.
著者
菅森 義晃 石渡 明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11, pp.391-401, 2015-11-15 (Released:2016-02-27)
参考文献数
56
被引用文献数
4

兵庫県川西市に分布する超丹波帯猪名川コンプレックスから蛇紋岩礫を多く含む礫岩を発見した.この礫岩の礫種は珪長質火山岩類,蛇紋岩,片岩を主体とし,花崗岩,玄武岩,チャートや泥岩などの堆積岩が伴われるため,礫岩の供給源は付加複合体や堆積岩,変成岩,花崗岩などの基盤岩が露出し,その上を火山岩類が覆う島弧または陸弧であると想定される.蛇紋岩礫中のクロムスピネルの形状は,大江山オフィオライトのかんらん岩に特徴的ないわゆる「踊るスピネル」であり,クロムスピネルの化学組成(Cr#50-51およびCr#42)も大江山オフィオライトのものに類似する.そのため,これらの蛇紋岩礫は大江山オフィオライトを起源とすることが考えられる.猪名川コンプレックスの砕屑岩はペルム紀新世の“舞鶴(夜久野)島弧”前縁の海溝で形成されたとみなされ,今回の発見は古生代前期の大江山オフィオライトがペルム紀新世にこの島弧の前弧域に露出していたことを示唆する.
著者
菅森 義晃
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.6, pp.390-406, 2006-06-15
被引用文献数
7 9

本論では,層序や構造に不明な点が多かった京都西山地域の中・古生界の層序区分を行った.研究地域の中・古生界は構造的上位の高槻層(再定義)と島本層(新称)及び下位の丹波帯に区分される.年代未詳とされた従来の高槻層は,砕屑岩主体の上部ペルム系高槻層と中部三畳系島本層に区分されることが明らかになった.一方,丹波帯は構造的上位から本山寺コンプレックス(再定義),出灰コンプレックス(再定義)及び田能コンプレックスに細分される.本山寺コンプレックスから三畳紀新世前期,出灰コンプレックスから三畳紀新世後期及び田能コンプレックスからジュラ紀古世を示す放散虫化石が,それぞれの砕屑岩から産出する.これらの丹波帯の各コンプレックスはその層相及び構造から付加複合体と判断され,丹波帯の付加・形成が三畳紀新世前期には始まっていたと考えられる.
著者
菅森 義晃
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.5, pp.368-374, 2013-05-15 (Released:2013-09-28)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

兵庫県北部の豊岡市但東地域には古生界と考えられている地層が露出している.しかし,この地層の詳細な岩相,年代および地質構造は明らかにされていない.地質学的検討を行った結果,この地層は泥岩,珪長質凝灰岩を主体とし,礫岩や珪長質凝灰岩を挟む赤色チャートを伴う地質体であることが判明した.泥岩からはPseudoalbaillella aff. longicornis Ishiga and Imotoを特徴的に含む放散虫化石群集が産出し,この群集はペルム紀古世最後期~中世中期の年代を示すと考えられる.秋吉帯ないし“志高帯”の下見谷層の岩相および年代と本地域の古生層のそれらを比較した結果,従来の解釈と同様に研究地域の古生層は下見谷層に対比されると考えられる.