著者
由佐 俊和 伊豫田 明 門山 周文 佐々木 一義 鈴木 実 山川 久美 藤澤 武彦
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.241-247, 2005-06-20
参考文献数
19
被引用文献数
11 14

目的.びまん性悪性胸膜中皮腫の臨床像・診断・治療・予後および予後因子について検討することを目的とした.対象.多施設から集積したびまん性悪性胸膜中皮腫51例を対象とした.結果.男性47例, 女性4例, 平均年齢60.0歳.アスベスト曝露歴を37%に認めた.発見動機は, ほとんど(88%)が自覚症状によるものであった.胸腔鏡下胸膜生検が確定診断法として最も多く行われたが, 初診から診断が得られるまでに, 60日(中央値)を要した.胸水の細胞診やヒアルロン酸値は, 両者ともに異常所見を示さない例がおよそ半数にみられた.治療は, 28例に手術が, 13例に放射線もしくは化学療法が, 10例には支持療法のみが行われた.全例の生存率は1年, 2年, 3年がそれぞれ50.6%, 25.0%, 12.7%で, 生存期間中央値は12.3ヶ月であった.予後因子の分析では, 単変量解析では年齢, IMIG臨床病期, 手術の有無が有意な因子であったが, 多変量解析では, IMIG臨床病期のみが有意な因子であった.術後補助療法として胸腔内灌流温熱化学療法を行ったものに良好な予後を示す例がみられた.結論.1)原因不明の胸水貯留例については, 確定診断を得るために遅滞なく胸腔鏡下胸膜生検を行うべきである.2)適正な手術適応の設定, 術後補助療法や新たな化学療法の開発などによる予後の改善が今後の課題である.
著者
藤沢 武彦 山口 豊 本郷 弘昭 柴 光年 由佐 俊和 崎尾 秀彦 川野 裕 門山 周文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.251-257, 1986
被引用文献数
4

中枢気道を狭窄ないし閉塞する肺癌切除不能例11例に対して内視鏡下に腫瘍内エタノール注入療法を考案し, その組織固定および止血効果につき臨床的ならびに基礎的検討を行ない, 以下の結果を得た。(1)腫瘍内へ99.5%エタノール注入後は速やかに腫瘍は淡赤白色に固定され, 内視鏡的にやや縮小傾向を示し, さらに出血例では高い止血効果が認められた。注入数日後には腫瘍は壊死に陥っており, 壊死組織内には病理組織学的に生腫瘍細胞はみられなかった。(2)気道内ポリープ状突出腫瘍に対しては本法は極めてよい適応と考えられるが, 壁外腫瘍に対してはその効果はあまり期待できないものと思われた。(3)筋弛緩剤投与下に行なった動物実験による検討では, 中枢気道壁内への99.5%エタノール投与は明らかなPaO_2の低下を示さなかったが, 肺胞内へのエタノールの流入は出血性肺炎を惹起し, PaO_2を有意に低下させた。(4)局所麻酔下に行なう臨床例においては, 腫瘍外に流出した少量のエタノールの一時的な咳嗽発作の惹起をみたのみで, 肺炎, 低酸素血症等の重篤な副作用は全くみられなかった。(5)生化学的検索でもエタノール注入は臨床的にも, また基礎的にも明らかな異常所見は示さなかった。(6)結論として, 腫瘍内エタノール注入療法は適応を選べば, 中枢気道の腫瘍性病変に対して有効な内視鏡下治療の一手段と考える。