著者
坊池 義浩 須山 絵里子 渡辺 嘉久 岩本 澄清 国分寺 晃 杉本 健 永井 朝子 藤盛 好啓 甲斐 俊朗 三木 均
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.700-707, 2017

<p>ハプトグロビン(Hp)抗体を保有するHp欠損患者に,血漿タンパク質成分を含有した血液製剤を輸血後,重篤なアナフィラキシーショックを起こすことがいくつか報告されている.我々は,<i>Hp<sup>del</sup></i>遺伝子ホモ接合体のHp欠損患者2人を経験した.これら2人の患者は,2回洗浄した赤血球の輸血により副作用を起こさなかった.そこで我々は,洗浄回数と血液製剤中に残ったHpの濃度を検討した.洗浄赤血球(WRC),解凍赤血球(FTRC),洗浄血小板(WPC)の各5製剤中のHp濃度を測定した.洗浄前の赤血球製剤(RBC)のHp濃度の平均値は98.800μg/m<i>l</i>,1回洗浄WRCの平均値は3.044μg/m<i>l</i>,2回洗浄WRCの平均値は0.233μg/m<i>l</i>,3回洗浄WRCの平均値は0.038μg/m<i>l</i>であった.1回,2回,3回洗浄後WRCの有意差は,それぞれ<i>p</i>=0.0089,<i>p</i>=0.0019,<i>p</i><0.0001であった.FTRCのHp濃度の平均値は5.116μg/m<i>l</i>であった.血小板製剤(PC)の血漿Hp濃度の平均値は656.600μg/m<i>l</i>,1回洗浄WPCの平均値が7.262μg/m<i>l</i>,2回洗浄WPCの平均値が0.463μg/m<i>l</i>であった.1回,2回洗浄後WPCの有意差は,それぞれ<i>p</i><0.0001,<i>p</i>=0.0016であった.これらの結果に基づき,我々はHp抗体を保有するHp欠損患者には,2回洗浄のWRCやWPCを輸血することが望ましいと考える.</p>
著者
柴原 浩章 金澤 理一郎 山崎 則行 竹村 正 香山 浩二 五熊 丈義 山東 太介 三澤 真人 甲斐 俊朗 原 宏
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.616-622, 1996

末梢血幹細胞移植(PBSCT)を併用する超大量化学療法が,進行卵巣癌の予後を改善する新しい癌戦略法として最近注目されている.今回われわれは,Virchowリンパ節転移を伴う卵巣癌症例に対し本治療を応用したので報告する.症例は50歳の経産婦人で,平成7年5月に左頸部リンパ節転移を伴う卵巣悪性腫瘍の診断のもと,近院産婦人科で開腹手術を受け,左卵巣原発の低分化型漿液性腺癌と診断を受け,術後管理の目的で当院紹介となった.まずCAP療法を3コース施行し,化学療法後にG-CSFを併用して計1.16メIOs個/kgのCFU-GMを採取し凍結保存した.同年9月にSecondlookoperationを施行後,十分な支持療法を併用したうえで,CBDCAおよびVP-16をおのおの900mg/m2ずつ投与する超大量化学療法を行った.PBSCTとG-CSFの連日投与により,血小板輸血は必要としたが,超大量化学療法の終了約2週間後に骨髄機能は回復した.〔産婦の進歩48(6);616--622,1996(平成8年11月)〕