著者
甲斐田 幸佐
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所(産業医学総合研究所)
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

午後に生じる眠気は,作業効率を落とすのみでなく,職場での事故や作業ミスを誘発する.これまで,午後の眠気を抑えるために,さまざまな方法が考案されてきた.なかでも,約20分間の短時間仮眠が注目され,その効果は多くの研究により実証されている,いくつかの企業においては,職場で短時間の仮眠をとる試みがなされているようであるが,安全かつ衛生的な仮眠が可能な場所を確保することは,どの職場でも容易であるとは考え難い.その場合,仮眠以外の選択肢が望まれる.昨年度までに行った一連の研究により,限られた昼休み時間にも利用できるような短時間(約30分間)の自然光受容が,覚醒度を上昇させるだけでなく,気分状態を改善することが新たに明らかになった.午後の自然光受容は職場におけるメンタルヘルスの維持・改善効果も期待される.今年度は,スウェーデン国カロリンスカ研究所において,眠気に関する基礎研究を行った.研究の結果,強い眠気の状態では,眠気の自覚症状と生理的覚醒度やパフォーマンスの間に乖離が生じることを実証した.この乖離は,安全に対する自覚を軽視することにつながる可能性があるため,労働安全を考える上で大切な視点であると考えられる.また,本研究では、眠気の生理的指標,特に心拍数の変動は,パフォーマンス悪化の数分前に生じることを明らかにした.生理的指標からパフォーマンスを予測することにより,労働作業中の事故を予測できる可能性がある.本年度の研究成果は2編の学術論文にまとめられた.