著者
町田 俊一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.41-46, 2003-09-30 (Released:2017-07-19)

浄法寺漆器の復興にあたっては、実質的な技術課題は下地加工と塗漆技術である。漆器生産技術の中でも、下地加工は漆器の強度を左右する重要な工程で、技術修得にも長い時間がかかると言われている。また、下地加工の意味は、素地の凹凸を埋めて、軟らかい木部の上に硬い塗膜層を形成し、強度を確保すること、断熱性を向上させることであると言われている。製造技術を新たに再修得しなければならなかった浄法寺漆器にとって、高度な技術は、時間とコストの増加を招く。そこで、日常品に適した下地法を採用するため、現在我国の主要な漆器に用いられている8種類の下地について手間と、強度の比較検討を行った。その結果、蒔地法、塗重ね法が高い強度を発揮する事が判明し、更にこれらの下地は技術修得が容易に行えることが判明した。
著者
町田 俊一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.79-84, 2003-11-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
5

これまでの伝統的工芸品産業が、デザインを取り入れることができなかったことについては、産地が形成されてきた経緯のなかで、高度な社会分業体制が構築され、新たな業務に対する柔軟性を失ったことが原因として考えられる。また、明治以来、製造業の社会的地位が低く見られるようになり、職人が手作業労働者に位置づけされたために、職入のなかからデザイナーを養成する余裕もなかったことも要因にあげられる。デザインを取り入れるためには、現在の製造システムを大幅に変革し、合理化する必要性があるが、その効果は大きいことが示唆された。それは、製品の価値を拡大するだけでなく、製造従事者の社会的地位や労働の魅力を向上し、伝統的工芸品産業自体を再生するものである。また、デザインを産地内に定着させるためには、産地の特性に適したカリキュラムを有する教育の場が必要であり、地方公設試験研究機関や大学などがその役割を担うことが期待される。
著者
町田 俊一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.33-40, 2003-09-30

浄法寺漆器の復興にあたっては、地元で採取される漆液を活用することが大きな前提条件となっていた。しかしながら、当該地域の人びとのあいたでは、漆を塗布する技術はもちろんのこと、漆液の加工技術や地場産漆液の特長・性能に関する客観的な知識が継承されていないのが実情であった。漆器復興にかかわる技術面における最大の課題は、漆器製造技術の修得であり、製造技術については2年かけて、職人を養成することとした。新たに求められる技術は、浄法寺産漆液の性能に対する客観的な評価、浄法寺産漆液自体の加工技術などであり、これらの技術を新たに開発・検討することが必要とされた。本稿は、浄法寺産漆の塗膜強度と中国産漆の塗膜強度の比較試験を行ったものであり、その結果、浄法寺産漆液が高い強度を有することが判明した。
著者
町田 俊一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.41-46, 2003

浄法寺漆器の復興にあたっては、実質的な技術課題は下地加工と塗漆技術である。漆器生産技術の中でも、下地加工は漆器の強度を左右する重要な工程で、技術修得にも長い時間がかかると言われている。また、下地加工の意味は、素地の凹凸を埋めて、軟らかい木部の上に硬い塗膜層を形成し、強度を確保すること、断熱性を向上させることであると言われている。製造技術を新たに再修得しなければならなかった浄法寺漆器にとって、高度な技術は、時間とコストの増加を招く。そこで、日常品に適した下地法を採用するため、現在我国の主要な漆器に用いられている8種類の下地について手間と、強度の比較検討を行った。その結果、蒔地法、塗重ね法が高い強度を発揮する事が判明し、更にこれらの下地は技術修得が容易に行えることが判明した。
著者
町田 俊一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.69-78, 2003-11-30

浄法寺漆器は、古くから、青森県との県境に位置する岩手県浄法寺町を中心とする地域でつくられてきた漆器である。かつては、東北地方のなかでは有数の規模の漆器産地にまで発展した。しかし、浄法寺漆器は世界大戦後に衰退し、昭和30年代には消滅してしまった。この産地の壊滅状態は約20年間統いたが、昭和50年代に、浄法寺漆器再興の運動が起こされた。筆者は、浄法寺漆器の復興計画へ参画し、この漆器を現代生活で使用できる日用品として開発を行ってきた。以前につくられていた製品の復活のみならず、現代の日用品として生活様式へ適合させることが大きな課題であった。この課題に対しては、問題を解決するための手法としてのデザインが大きく貢献できると考えられ、漆器製造の技術だけでなく、新たなデザインの作業が総合的な観点から展開された。本稿では、浄法寺漆器のデザイン開発を通して得られた伝統的工芸品とデザインの関係に関する知見について報告する。