著者
町田 貴胤 町田 知美 佐藤 康弘 田村 太作 庄司 知隆 遠藤 由香 福土 審
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1134-1139, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
9

副腎皮質機能低下症は食欲不振, 悪心・嘔吐, 易疲労感など非特異的症状を呈することが多く, うつ病との鑑別が難しい. うつ病を疑われ心療内科に紹介され, 下垂体性副腎皮質機能低下症と判明した3例を報告する. 症例1 : 59歳男性 : 特に誘因なく悪心嘔吐が出現し体重が6カ月で18kg減少, 抑うつ気分や倦怠感がみられた. 一般血液検査, 内視鏡検査, 腹部CTにて異常なしとして紹介された. 低血糖・低ナトリウム血症のほか, cortisol 1.03μg/dl, ACTH<5.0pg/mlと低値, ACTH単独欠損症と判明した. 症例2 : 77歳男性 : 愛犬の死後に抑うつ気分や腰下肢痛が出現, 一般血液検査や腰部X線で異常なく紹介された. cortisol 4.21μg/dl, ACTH 5.7pg/mlと低値, 脳MRIでRathke囊胞を認め, 続発性副腎皮質機能低下症と診断した. 症例3 : 47歳男性 : 東日本大震災で被害を受け悪心嘔吐や倦怠感が出現, 抑うつ気分がみられ一般血液検査で異常なしとして紹介された. cortisol<0.8μg/dl, ACTH<2.0pg/mlと低値, 部分的下垂体機能低下症と甲状腺機能亢進症の合併と判明した. 心療内科において非特異的な身体症状や抑うつ気分を呈する患者には, 一般検査で異常がなくとも副腎皮質機能低下症とうつ病を早期に鑑別すべく副腎皮質機能検査が推奨される.
著者
町田 知美 町田 貴胤 田村 太作 遠藤 由香 福土 審
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.460-466, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
10

14歳, 女児. 11歳から不登校傾向, 対人恐怖が顕在化しA病院精神科に通院開始した. 中学入学頃から食事量も減りはじめやせ願望も明らかになった. 14歳 (中学2年生) になると30kgまで体重が減少したため神経性やせ症 (摂食制限型) と診断され当科に入院した. 入院時は身長149cm, 体重26.6kg, BMI 12.0. 初めは経口摂取カロリーは1日500kcal以下でほとんど体重は増加しなかったが, コミュニケーション能力の低さと対人恐怖のために心療内科的介入は困難だった. 内科的治療を主体とせざるを得なかったが, 行動観察の中で食行動に自閉症的な独特のこだわりがあることがわかった. これを生かした食事の工夫を試みたことで摂取カロリーを1,400kcalまで増やすことができ, 体重は33.5kgに達して退院した. 自閉症スペクトラム合併症例での治療では, 患者特有の特徴を理解したうえで独自の工夫が必要である.