著者
畝山 寿之
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.432-441, 2015
被引用文献数
1

和食(WASHOKU)は出汁(だし)のうま味を共通の要素として高度にそして多様に発達してきた.日本の食文化がユネスコ無形文化遺産に認定されたことを含め,日本食のもつ健康価値が改めて世界から注目されている.われわれはうま味調味料グルタミン酸ナトリウム(MSG)の生理機能を先端的脳科学と栄養生理学的な研究手法を用いて追及し,うま味物質は「タンパク質摂取のマーカー」として味覚と内臓感覚を介して摂取したタンパク質の消化吸収にかかわるさまざまな生理機能を賦活し,健康な食生活に寄与している可能性を示してきた.本解説では,うま味の生理機能に注目し,日本食がもつ健康価値の可能性について解説していきたい.
著者
北村 明彦 畝山 寿之
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.6, pp.306-310, 2015 (Released:2015-06-10)
参考文献数
18

自律神経を構成する交感神経と副交感神経は,一般的に脳から末梢臓器へ情報伝達を行う遠心路としての機能がよく知られているが,これらの自律神経束には求心性神経線維も含まれている.特に,迷走神経束はその70%以上が求心性であり,内臓感覚神経として機能していることが知られている.求心路の働きにより各臓器の状態がモニターされ,自律神経反射によって生体恒常性が維持されている.我々はこれまで,消化管での栄養素受容を求心性迷走神経の活動を指標として評価を行うとともに,その自律神経反射について検討を行ってきた.迷走神経活動測定にはいくつかの方法があり,研究の対象によって評価法を選ぶ必要がある.本稿では,腹部迷走神経が担う栄養素情報の解析に有効な求心性迷走神経線維からの神経活動記録法と,その薬理特性を検討するのに有効な迷走神経下神経節単離ニューロンからの神経活動記録法について紹介する.
著者
畝山 寿之 鳥居 邦夫
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.97-108, 2010-08
被引用文献数
1

日本人が低栄養の危機にさらされていた前世紀初頭に、グルタミン酸塩がうま味物資であることが1千年以上の歴史を誇る伝統食素材(昆布)から発見された。近年、グルタミン酸は味覚を通じて、単に「食べものをおいしくする」だけではなく、摂取後は消化管からの内臓感覚を通じてたんぱく質の摂取や消化吸収など生物が生存していく上で根本的な生理機能に深く関わっている事実が動物実験やヒト介入試験で示されている。そして、昆布以外に世界中の調味料(醤油、オイスターソース、トマトケチャプ、ナンプラーなど)や調味素材(トマト、チーズなど)に遊離グルタミン酸は豊富に含まれていることが分かるにつれ、人類はおいしさを指標に経験的にグルタミン酸を食事に取り入れる食文化として継承し、グルタミン酸のもたらす生理作用の恩恵に授かってきたと考えられるようになった。発展途上国では依然として深刻な栄養不良の問題を抱え、先進諸国においては高齢化・少子化社会による独居や入院高齢者の低たんぱく栄養の問題が深刻化している。本総説では、たんぱく質の摂取及び消化吸収におけるグルタミン酸の栄養・生理学的意義について我々の最近の研究成果を交えて紹介する。そして、日本の発見であるうま味のもつ健康価値とその利用について考える。
著者
畝山 寿之
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.432-441, 2015-06-20 (Released:2016-06-20)
参考文献数
66
被引用文献数
1 1

和食(WASHOKU)は出汁(だし)のうま味を共通の要素として高度にそして多様に発達してきた.日本の食文化がユネスコ無形文化遺産に認定されたことを含め,日本食のもつ健康価値が改めて世界から注目されている.われわれはうま味調味料グルタミン酸ナトリウム(MSG)の生理機能を先端的脳科学と栄養生理学的な研究手法を用いて追及し,うま味物質は「タンパク質摂取のマーカー」として味覚と内臓感覚を介して摂取したタンパク質の消化吸収にかかわるさまざまな生理機能を賦活し,健康な食生活に寄与している可能性を示してきた.本解説では,うま味の生理機能に注目し,日本食がもつ健康価値の可能性について解説していきたい.