著者
川端 厚子 登倉 尋實
出版者
大阪信愛女学院短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

夕刻から入床までの間携帯型電話を使用する際、そこから発生する電磁波は人体生理に相当影響することが判明した。すなわち、使用中並びに使用後、脳温度を反映する鼓膜温度を有意に上昇させ、さらにまた、松果体から分泌されるメラトニンホルモンを有意に減少させることが判った。さらに、電気敷き布団から発生する電磁波も唾液中の免疫グロブリンAを有意に減少させることも判った。以上のように、夕刻から入床前にかけて電磁波を発生する携帯電話の使用や電磁波を発生する布団を使用して睡眠をとることは電磁波の発生量が極めて微量であっても鼓膜温度の夕刻から夜間にかけての自然の下降を妨げ、メラトニンの分泌量を抑制し、さらには免疫系に1種である免疫グロブリンAに分泌量を抑制することが明らかになった。さらに物理実験で、電磁波は対象物を加温する性質を持つことを明らかにした。携帯電話の使用時、鼓膜温度が上昇することは、電磁波のこの性質を反映すると思われる。夕刻自然に脳温が下降する際、運動により脳温を上昇させると、夜間のメラトニン分泌量が抑制されるという文献を考慮すると、電磁波により脳温の下降が抑えられその結果としてメラトニンの分泌量が減少した考察されよう。さらに、携帯電話使用により入床前、また、睡眠中、中核温度に深い下降が妨げられたことは、深い睡眠を妨げることになるのみならず、免疫系の免疫グロブリンAの分泌も抑制された事実は健康の維持増進の視点からも問題は大きいと思料されよう。
著者
緑川 知子 登倉 尋實
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.323-330, 1994-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
30
被引用文献数
2

寒冷環境における帽子の保温効果について, 着帽による被覆部の保温効果が, 体全体からの熱放散をどれほど減少させているか, 果たして直腸温・鼓膜温にどれほど影響を及ぼしているのかを, 温熱生理学の立場から明らかにするために, 7人の女子学生を対象に, 環境温10℃の寒冷環境において, ウサギの毛皮でできている防寒帽着用時と無帽時について, 体温調節反応を調べた.得られた主な知見は, 以下の通りである.1) 環境温19℃における鼓膜温は, 無帽時36.67±0.11℃, 着帽時36.65±0.12℃で, ほぼ同じレベルであったが, 寒冷暴露直後, いずれの場合にも約0.1℃下降した.無帽時の鼓膜温は下がり続け36.54±0.13℃に至ったが, 着帽時の鼓膜温は, 寒冷環境において着帽により, むしろ0.3℃の上昇を示し, 36.77±0.12℃となり, 無帽時より有意に高いレベルを維持した。有風下では, 無帽時には0.25±0.05℃の下降を示したが, 着帽時には0.11±0.03℃しか下降しなかった.2) 頭頂部毛髪上温は, 前室では無帽時には29.8±0.9℃, 着帽時に30.8±0.5℃で, ほぼ同じレベルであったが, 寒冷暴露後無帽時に直ちに約8℃下降し21.5±0.7℃になった後, 有風時には更に4.6℃の下降を示した.寒冷暴露後の着帽時の頭頂部毛髪上温は, むしろ1.7±0.5℃上昇を示し, 無帽時よりも有意に高い32.9±0.5℃のレベルを維持した。有風時も僅か0.5±0.7℃しか変化しなかった。帽子の表面温は, 前室に置いているときにはほぼ室温と同じ19℃であったが, 寒冷暴露後は, 環境温に近い13℃を示した。これは, 無帽時の頭頂部毛髪上温21.5±0.7℃よりも, 更に低い値であった.3) 前額部表面温は, 前室では無帽時に32.9±0.1℃, 着帽時に32.4±0.2℃でほぼ同じであったが, 寒冷暴露後は, 無帽時に2.4±0.4℃下降を示し30.3±0.4℃となり, 有風時にはさらに5.6±0.6℃下降した.着帽時には寒冷暴露後1.9±0.2℃上昇を示し, 無帽時よりも有意に高い34.6±0.2℃となり, 有風時も0.7±0.2℃の下降しか認められなかった.4) 前室における直腸温は, 無帽時には37.02±0.09℃, 着帽時には37.00±0.12℃で, ほぼ同じであった.寒冷有風時における直腸温は, 無帽時には0.02±0.02℃の有意な下降を示したが, 着帽時には変化が認められなかった.5) 無帽時の心拍数は前室における78.41±11.9beats/11ninから, 寒冷暴露後有意に低下して68.9±10.7beats/minになったが, 着帽時には有意な低下は認められなかった (前室では76.9±12.7beats/min, 寒冷暴露後71.8±11.5beats/min).寒冷環境並びに有風下において, 耳部は着帽時にも無帽時と同様に露出されていたにも拘わらず, 鼓膜温が着帽時に無帽時よりも有意に高く保たれたのは, 着帽時には帽子の保温効果により頭頂部毛髪上温, 前額部皮膚温が無帽時のように低下しなかったことにより, 組織伝導による熱放散が少なく, また対向流熱交換も行われて, 鼓膜温を低下させなかったと考察した.無帽時に認められた寒冷有風時における直腸温の有意な下降が, 着帽時には認められなかった.これは, 着帽によって体全体からの熱放散が抑制されたからと考えられる。また, 着帽時には前額部が保温されたので, 無帽時に認められた寒冷刺激による徐脈が, 着帽時には消失した.
著者
金 煕恩 登倉 尋實
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.241-247, 1995-03-15
被引用文献数
1

本実験の目的は女性被験者が1日の異なる時間帯に温暖な環境にさらされたとき,衣服の脱衣行動は異なるのかを調べることである.人工気候室の温度が15℃から30℃まで1時間かけて上昇するとき,被験者は常に自分が快適になるように衣服を調節することを前もって指示されていた.環境温上昇時,午前より午後の方がもっと早く,そしてたくさんの服を脱ぐという結果が得られた.このことは体温調節のための脱衣行動がサーカディアンリズムの影響を受けることを示している.深部温のセットポイントは実際の深部温より先行していると考えられていることから,午前は実際値より上に,午後は下にセットポイント値があることが考えられる.これらを考慮し,本実験の結果を体温のセットポイントと実際値のあいだの負荷誤差の立場で考察する.