著者
白井 亮洋
出版者
大阪府立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

免疫測定応用を指向した新規材料: グラフェン含有ハイドロゲル微粒子の開発に関する研究の概要を以下にまとめる。まずグラフェン表面をポリエチレングリコール(PEG)で被覆したグラフェン含有ハイドロゲル微粒子を調製するために、水/N-メチルピロリドンの均一系混合溶媒に、グラフェン、PEGを添加し、攪拌下でPEGの貧溶媒である2-プロパノールを滴下し、PEGをグラフェン表面に析出させた。グラフェンの蛍光消光機能に加え、グラフェン表面に析出したPEG膜に分子ふるい分離機能を付与するために、グラフェン含有ハイドロゲル微粒子調製時のグラフェンに対するPEG量を検討し、未反応蛍光標識抗体と免疫複合体を分離可能な調製条件を決定した。免疫測定法への応用可能性を評価するために、種々濃度のヒトC反応性タンパク(CRP)を蛍光標識抗ヒトCRP抗体と混合・反応させた後、その試料溶液をグラフェン含有ハイドロゲル微粒子と混合し、蛍光強度を測定したところ、ヒトCRP濃度依存的に蛍光強度が増大した。これは試料中ヒトCRP濃度の増大に伴い、グラフェン表面のPEG膜を通過できない免疫複合体濃度が増大したことを示唆しており、作製したグラフェン含有ハイドロゲル微粒子が免疫測定に応用可能な新規材料であることが明らかとなった。さらに、2つのポリジメチルシロキサン(PDMS)製マイクロ流路内壁に、グラフェン含有ハイドロゲル微粒子と蛍光標識抗ヒトCRP抗体を物理吸着固定し組合せた、1ステップ免疫測定用マイクロデバイスを作製した。ここへ種々濃度のヒトCRPを毛細管現象で導入したところ、流路内壁に固定化された2種試薬と試料中ヒトCRPが反応した。蛍光強度変化をモニタリングしたところ、約2分で試料中ヒトCRP濃度依存的に蛍光応答を示したこと(先行研究の応答時間: 約20分)から、本免疫測定用マイクロデバイスの優位性が示された。
著者
河相 優子 白井 亮洋 角田 正也 井手上 公太郎 末吉 健志 遠藤 達郎 久本 秀明
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.125-131, 2021-03-05 (Released:2021-04-19)
参考文献数
41
被引用文献数
1

本研究では,インクジェットプリンティングを用いて一つのポリジメチルシロキサン(Poly(dimethylsiloxane), PDMS)製マイクロ流路内に2種類の反応試薬を固定化した1ステップ均一系競合型バイオアッセイマイクロデバイスを開発した.インクジェットプリンターは試薬をナノリットルサイズの液滴として正確な量を位置選択的に吐出するため,互いに反応する2種類の試薬を混ざることなく微少空間内に独立して固定化できる.そのため,先行研究でデバイスを作製する際に課題となった,相互に反応する試薬を固定化した二つのマイクロ流路を精密に組み合わせる操作が不要となる.本研究ではその一例として,ビオチン固定化酸化グラフェン(BG)と蛍光標識ストレプトアビジン(F-SA)を1本のマイクロ流路内に固定してビオチンアッセイマイクロデバイスを試作し,基礎検討として試薬の固定化位置や試薬及び添加剤種の評価を行った.その結果,液滴を流路壁面寄りに吐出すると再現性よく流路底面の両サイドに試薬固定できること,添加剤としてトレハロースが適すること及び,試料導入操作のみでの1ステップ検出で,検出下限は0.68 ng mL−1となり,先行研究と比較して約1/600倍改善することを明らかにした.