著者
岡村 浩 久保 知義 白山 琢持
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.135-141, 1980-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
2

1977年度ヨーロッパ諸国から入手した中小牛クロム甲革, 計50点を試料革とし, 化学分析値, 機械的性質および物理的性質を比較した結果, 大要次のようになる.1) 西ドイツのクロム甲革 (主としてボックス仕上げ) は植物タンニンあるいは合成鞍剤による再鞣処理程度が少なく, イダリアおよびフランスのクロム甲革 (アニリン仕上げ) は植物タンニンあるいは合成鞣剤による再鞣処理が十分に行われていることが認められた.シュリンク革は, 銀面の平滑なクロム甲革の化学分析値と比較して大きな差がない.スエード革は, 一般クロム甲革に比較して全油分の含有量が多く, 結合性加脂剤が多く使用されているものと考えられた.2) イタリア, フランス製のクロム甲革は, 1kg/mm2荷重時の伸びが大きく, 7mm高および銀面割れ時の荷重が小さい柔軟な革である.これと逆に日本製クロム甲革は, 引裂強さ, 7mm高および銀面割れ時の荷重が最高値を示し, 銀面が硬い柔軟性に乏しい傾向にあった.シュリンク革は, 銀面割れ時の高さが低く, スエード革は国別の差異は見いだされず, 一般クロム甲革に比較して機械的性質が劣っていた.3) 物理的性質では, 一般クロム甲革の耐水性と吸水度 (30分間) に差が見られ, とくに日本製のクロム甲革の耐水性は低かった.シュリンク革は, 一般クロム甲革に比較して, 耐水性が高く, 吸水度 (30分間) が低い値を示し, また耐屈曲性に劣る.スエード革では, 耐水性が著しく低く, 透湿性が比較的高い.