著者
荒井 美奈子 白崎 文朗 長谷川 稔 竹原 和彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.14, pp.2471-2478, 2007-12-20 (Released:2014-12-03)

金沢大学皮膚科で10年間に経験した成人発症Still病15症例(男性1例,女性14例,平均年齢35.8歳)について,臨床症状,治療,および予後に関して検討した.本症の特徴的な皮疹は発熱に伴い出没する痒みのない紅斑とされている.しかし,自験例の検討では,発熱に伴って出没する紅斑が4/15例(27%)にしかみられなかったのに対し,発熱と関連なく出没する紅斑が9/15例(60%)にみられた.また紅斑がみられた症例のうち6/15例(40%)は痒みを伴っていた.これらの検討からは,発熱との関連やそう痒の有無にはとらわれず,出没する散在性の淡紅色の小紅斑がStill病の皮疹の特徴と考えられた.経過の検討では,12カ月以上観察しえた14例中6例(43%)はステロイド剤の中止が可能であった.また14例中7例(50%)は減量時などに症状の再発があった.臨床経過が初発症状や検査値により推測できるかを予測したところ,皮疹が発熱や関節痛に先行して出現した6例は全例再発がなく,皮疹が発熱や関節痛と同時あるいは後で出現した群の再発率(8例中7例:88%)と比べて有意に低かった(P<0.05).今後多数例での解析は必要であるが,初発が皮疹のみで全身症状がすぐに出現してこない症例は軽症で,再発しにくい可能性があると考えられた.
著者
白崎 文朗
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学十全医学会雑誌 (ISSN:227226)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.222-229, 1996-04-01
参考文献数
32

G1/S期境界部に同調させたHeLa細胞に対してPUVA0.4J/cm2,1回処置を行い,FCMによる細胞動態学的観察と同時にサイクリンA, B mRNAの発現量を経時的に観察した. 1)UVA照射群では大部分の細胞がG2+M期に存在する時にほぼ一致して,サイクリンA, B mRNAの発現量のピークが認められ,細胞がG1期に入ると共に減少した. 2)無処置群,8MOP添加群では,UVA照射群とほぼ同様の成績が得られた. 3)PUVA処置群では27時間後にはG2+M期細胞の割合が60%を超え,その後96時間後迄は大部分の細胞がG2+M期にあった. 4)PUVA処置群のG2+M期に蓄積していた細胞の大部分は,G2期細胞であった. 5)PUVA処置群では観察された時間内に,サイクリンA, B mRNAの発現量の増加はなかった.PUAVにより生じた細胞のG2蓄積には,サイクリンA, B mRNAの発現抑制が関与している
著者
竹原 和彦 白崎 文朗 佐藤 伸一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

全身性強皮症は、皮膚や肺、心、腎、消化管などに広範な線維化や血管障害をきたす結合織疾患のひとつであり、その発症に関わる重要な細胞増殖因子としてトランスフォーミング成長因子(transforming Growth Factor-β,TGF-β)、結合組織成長因子(Connective Tissue Growth Factor, CTGF)が注目されている。本研究は、TGF-βの皮下投与により誘導される新生マウスの皮膚線維化モデルをトランスジェニックマウスを用いて作製し、CTGFの皮膚線維化機構における役割について検討した。使用したマウスは、1型コラーゲンのα2鎖をコードするproα2鎖(I)コラーゲン遺伝子のプロモーター領域にレポーター遺伝子を組み込んだマウスである。このモデルにおいて、皮下にTGFβのみを注入すると4日目に線維化が誘導されるが、8日目には消失する、しかし、TGFβを3日間注入し、次にCTGFを4日間注入すると線維化が持続する。コラーゲン遺伝子の転写活性は、TGFβ単独投与群では、4日目をピークに低下し8日目にはほぼ0になったのに対し、TGFβ/CTGF連続投与群では8日目まで高値が持続し、さらにTGFβ/CTGF連続投与群でコラーゲン遺伝子が転写されている線維芽細胞数が増加していた。このことより、CTGFはコラーゲン遺伝子を発現する線維芽細胞を増加させることにより、遺伝子の転写活性を維持し、コラーゲン産生を亢進させると考えられた。今後は、この皮膚線維化モデルにおけるサイトカインやケモカインの関与についてさらに検討したいと考えている。