著者
白川 美也子
出版者
昭和大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的はDV等のストレスやトラウマをもつ妊産婦の精神医学的・心理学的実態と、それらか新生児の心身の状態および発達に及ぼす影響について産前から産後の母子を追跡調査して明らかにすることである。このたび昭和大学新生児コホートに参加することになり、特にオキシトシンの測定が可能になった。オキシトシンは胎児の成長や発達、出産後のアタッチメント形成の双方に関連があることで知られており、さらに抑うつや不安で女性において低下することが知られている。参加者の中から本研究に同意が得られたものに、妊娠初期・中期・後期における採血を行い、オキシトシン濃度を測定する。初期には抑うつや不安、児へのボンディング、知覚されたストレス等の調査を行い、関連の可能性がある要素としてセルフエスティーム、ソーシャルサポート、ライフスタイルの調査を行う。中期にMINIを施行して現在および過去の主だった診断名をつけ、出産後に新生児行動評価と母子相互作用の評価を行い、ストレスやうつ、不安からくる自己調節障害の現れとオキシトシンの関連を確認することとした。さらに1か月の時点での身体的発達と、6か月の時点での養育者の育児ストレスと子どもの気質を調査することによって、妊娠時のストレスや不安がうつが、胎児の成長発達やその後の母子相互作用に関連するか、それがオキシトシンにyって媒介されていつかをみる。また社会福祉施設で生活する周産期等にDV被害をうけた女性のデータとも比較可能な部分は比較していく。現時点で発達コホート中の母親で同意がとれたケースが100例程度あり、また社会福祉施設でより簡易な調査を行っているケースも100例程度ある。今後、オキシトシンのデータを得て、順次母親のメンタルヘルスと関連する要素や、オキシトシンデータとの関係、その後の発達や母子相互作用や気質等に及ぼす影響を順次解析していく。