著者
白澤 卓二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.24-27, 2010 (Released:2010-03-25)
参考文献数
9

1980年以降の分子生物学の発展により,加齢生物学の進展が目覚しい.特に,線虫や酵母菌を用いた長寿遺伝子の発見により,加齢生物学と老化の病理学を再考する必要に迫られている.インスリンシグナルやミトコンドリアの代謝は動物の寿命を制御しているばかりでなく,老化をも制御している可能性が示唆されている.一方,遺伝性早老症の研究から,ゲノムの安定性と修復機構が老化のプロセスに関与していることが分かってきた.高齢期に発症してくる病気はヒトの寿命を規定していることから,老化のプロセスは寿命を規定しうる重要な要因である.1950年以来提唱され続けている老化学説であるフリーラジカル学説と最近の長寿遺伝子の関係やゲノム修復機構との関連性,テロメアと細胞老化の関係など最新の老化研究の考え方を解説する.
著者
清水 孝彦 白澤 卓二
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.138, no.2, pp.60-63, 2011 (Released:2011-08-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1

加齢と共に変動し,老化や加齢を予測できる因子を老化バイオマーカーと位置付けている.これまでに,性ホルモンのエストロゲンやテストステロンが知られている.Insulin-like growth factor-1やビタミンDなどの成長因子やビタミンも加齢性の変動を示す.カロリー制限アカゲザルの研究からdehydroepiandrosterone sulfate,インスリン,体温の変化が長期縦断研究の加齢性変化データと一致することが判明し,注目されている.さらに最近では,生活習慣病と強くリンクする成分も加齢性変化を示すことが明らかとなった.高齢社会を迎えた現在において,現在の健康状態や老化状態を客観的に評価する老化バイオマーカーの利用価値は高まっている.