著者
津脇 晋嗣 中島 徹 龍原 哲 白石 則彦
巻号頁・発行日
no.133-134, pp.41-74, 2016 (Released:2016-09-14)

我が国の森林・林業政策において,森林の多面的機能がどのように重視され推移してきたかを調べるため,林野庁における森林・林業に関する事業に着目して,森林の多面的機能に関する用語・記述が使われている事業の内容や予算額の推移などからその変遷などを調べた。その結果,森林の多面的機能の発揮を期待した事業量は60%~80%で推移し,事業に用いられる森林の多面的機能の種類は時期が進むほど多様化する変化がみられた。その変化は平成4年の「地球サミット」などを契機に大きくなり,保健・レクリエーション機能,生物多様性保全機能や地球環境保全機能などに関する用語・記述が増え,時期を追うごとに,ほぼ全ての多面的機能がほぼ全ての事業区分にみられ,異なる事業区分が一体となって推進する可能性も考えられた。また,森林の多面的機能を重視する傾向は,森林整備などの公共事業から,計画の策定や制度の充実などのソフト対策を行う非公共事業に移行していると考えられた。森林の多面的機能の持続的な発揮を図るため,今後とも持続可能な森林経営を行うことが重要であり,木材を利活用していくことへの国民の理解や森林所有者が伐採後の再植林や保育活動などに利点を見出せる状況をつくることが重要と考えられた。
著者
南雲 秀次郎 白石 則彦 田中 万里子
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.71, pp.p269-330, 1981-12
被引用文献数
1

東京大学千葉演習林スギ林生長試験地の資料に基づき,電算機を用いてスギ林収穫表を調製するシステムを研究した。この収穫表調製システムでは,さまざまな間伐方法のもとで林分から得られる幹材積と利用材積が計算できる。このシステムによる収穫表の調製手順は次の通りである。1.林分の平均直径,その分散,立木密度を組み合せて林分胸高断面積の生長を記述するモデルを確定する。2.上で確定した林分胸高断面積のもとで,林分の直径分布を決定する。この直径分布の関数としては,ワイブル分布を利用する。3.林分平均樹高の生長曲線を決定する。この曲線式としてはミッチェルリッヒ式を利用する。4.樹幹の相対幹曲線式を決定する。この曲線式としては三次の多項式で,いわゆる吉田式と呼ばれる関数を用いる。5.樹高-直径関係を相対化した相対樹高曲線式を決定する。いま,任意の樹幹の胸高直径,樹高をd,hとし,林分の平均胸高直径,平均樹高をそれぞれ〓,〓とすれば,この式は〓となる。ただしa,b,cはパラメター,tは時間である。これらの式を組み合せると次のようにして収穫表を調製することができる。まず,地位,林齢,間伐方法に応じた直径分布を決定し,林分平均樹高を求める。この平均樹高を相対樹高曲線に適用して,実際の大きさをもつ樹高曲線を復元する。この曲線に基づいて,相対幹曲線を利用して径級ごとの細り表をつくる。この細り表によって径級ごとの幹材積および利用材積を計算し,これを全径級にわたって加え合せて収穫表が確定する。以上の手法によって東京大学千葉演習林スギ林収穫表を調製した。利用材積の計算は三種類の木取り法によっておこなった。計算の結果,幹材積で測った平均生長量最大の時期より利用材積で測った平均生長量最大の時期の方が5年から15年程度おそいこと,また,利用材積による金員収穫は木取り法によって大きな差があらわれることがわかった。A computerized system TUSYCS constructing an empirical yield table for sugi even-aged stands was developed on the basis of data from the permanent experimental plots in the Tokyo University Forest in Chiba Prefecture. Using the basic stand variables of age, mean height growth expressed by the so-called Mitscherlich equation, number of stems, basal-area per hectare, taper curve, and relative height-diameter curve, the system predicts the stand diameter distribution, the volume, followed by the assortment of logs produced by a specific log cross-cutting strategy.