著者
百瀬 弥寿徳
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は飲酒時の心拍数増加作用について、アセトアルデヒドは心臓洞房結節ペースメーカー細胞を直接活性化し発現するとの仮説を基に、アセトアルデヒドの心拍数増加作用を明らかにすることを目的とした。アセトアルデヒドは交感神経終末よりカテコールアミンの遊離作用を持つことが知られているが、単離細胞標本では作用部位がpost-synaptic membraneに限局されることから、アセトアルデヒドの心拍数への効果が明らかにされると考える。本研究ではウサギ心臓洞房結節ペースメーカー細胞を単離し、アセトアルデヒドが陽性変時作用を有することを確認した。次にパッチクランプ法によりIfチャネル、T-type Caチャネル、Na/Ca exchange currentsを計測してアセトアルデヒドの陽性変時作用機序を検討した。その結果アセトアルデヒドはT-type Caチャネルを活性化することが明らかとなった。またL-type Caチャネルも著明に活性化した。このことは細胞内Ca濃度の増加がアセトアルデヒドによって起こりペースメーカーの発現に促進的に働くことが示唆された。またIfチャネル、Na/Ca exchange currentsに対してアセトアルデヒドは明らかな影響を及ぼさなかった。以上の研究結果は、アセトアルデヒドがこれまで考えられた交感神経終末からのカテコールアミンの遊離作用に起因する心拍数の増加作用以外に、直接洞房結節ペースメーカー細胞に作用し陽性変時作用を起こすことを明らかにした。その機序はT-type Caチャネルの活性化と細胞内Ca濃度の増加に起因するものと結論した。