著者
益澤 秀明 平川 公義 富田 博樹 中村 紀夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.104-110, 2004-02-20
被引用文献数
4

交通事故による脳外傷後には,特徴的な知的障害・人格変化・社会適応障害が後遺しやすい.しかし,専門家も見過ごしやすいため社会問題になり,"高次脳機能障害"とよばれるようになった.しかし,この命名では従来からの高次脳機能障害と紛らわしく混乱が生じている.そこで"脳外傷による高次脳機能障害"とよぶことにした.本障害は外傷後の意識障害の期間と関連し,急速に生じる全般性脳室拡大の程度とも関連する.つまり,本障害はびまん性軸索損傷やその他のびまん性脳損傷によってもたらされる大脳白質損傷による神経ネットワークの障害と考えられる。画像所見変化に注目することにより非外傷性疾患との鑑別も容易であり,急性期管理に携わる脳神経外科医の眼が後遺症評価においても重要である.
著者
益澤 秀明 平川 公義 富田 博樹 中村 紀夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.104-110, 2004-02-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
31
被引用文献数
2 4

交通事故による脳外傷後には,特徴的な知的障害・人格変化・社会適応障害が後遺しやすい.しかし,専門家も見過ごしやすいため社会問題になり,"高次脳機能障害"とよばれるようになった.しかし,この命名では従来からの高次脳機能障害と紛らわしく混乱が生じている.そこで"脳外傷による高次脳機能障害"とよぶことにした.本障害は外傷後の意識障害の期間と関連し,急速に生じる全般性脳室拡大の程度とも関連する.つまり,本障害はびまん性軸索損傷やその他のびまん性脳損傷によってもたらされる大脳白質損傷による神経ネットワークの障害と考えられる。画像所見変化に注目することにより非外傷性疾患との鑑別も容易であり,急性期管理に携わる脳神経外科医の眼が後遺症評価においても重要である.
著者
益澤 秀明
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.265-270, 2015-09-30 (Released:2016-10-01)
参考文献数
32

びまん性軸索損傷は重度から最軽度の軽度脳外傷まで量的に連続する脳外傷病態スペクトラムである。脳挫傷などの局在性脳損傷が合併していても閉鎖性頭部外傷の転帰・後遺障害ではびまん性軸索損傷が主体とされる。びまん性軸索損傷後遺症は精神症状 (=脳外傷による高次脳機能障害: 認知障害と情動障害からなる) と神経症状 (小脳失調と中枢性運動麻痺) からなり, 軽重の違いはあっても共通している。 重度ほど自己洞察性が低下し病識・自覚症状が減少・消失するのも特徴である。後遺障害の程度は受傷直後からの意識障害期間と, また慢性期の脳萎縮・全般性脳室拡大の程度と有意に関連する。障害が軽度ほど, また若年齢ほど長期的には改善傾向が著しい原則がある。軽度脳外傷後の一部症例に遅発し遷延するʻ脳振盪後症候群ʼは脳外傷重度と関連せず, 症状に改善傾向がなく遅延増悪し, 自己洞察性が正常~亢進しているのが特徴である。