著者
益澤 秀明 平川 公義 富田 博樹 中村 紀夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.104-110, 2004-02-20
被引用文献数
4

交通事故による脳外傷後には,特徴的な知的障害・人格変化・社会適応障害が後遺しやすい.しかし,専門家も見過ごしやすいため社会問題になり,"高次脳機能障害"とよばれるようになった.しかし,この命名では従来からの高次脳機能障害と紛らわしく混乱が生じている.そこで"脳外傷による高次脳機能障害"とよぶことにした.本障害は外傷後の意識障害の期間と関連し,急速に生じる全般性脳室拡大の程度とも関連する.つまり,本障害はびまん性軸索損傷やその他のびまん性脳損傷によってもたらされる大脳白質損傷による神経ネットワークの障害と考えられる。画像所見変化に注目することにより非外傷性疾患との鑑別も容易であり,急性期管理に携わる脳神経外科医の眼が後遺症評価においても重要である.
著者
平川 公義 中村 紀夫 益沢 秀明 橋爪 敬三 佐野 圭司
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.71-80, 1970-04-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
14
被引用文献数
1

頭部衝撃による脳, 頭蓋骨の傷害は, 人頭皮によって緩和される. 人頭皮の衝撃に対する緩衝能ならびに物理的特性を知るとともに, 市販の材料中より, 等価の緩衝材料を見出す目的で, ゴム類, 土, 発泡スチロールについて実験を行なった.屍頭頭頂部より採取した人頭皮の試験片を鉄台上に置き, その上へ, 加速度計を内臓した重量5kgの頭蓋モデルを, 高さを変えて落下せしめ, 衝撃加速度を記録すると同時に, 傷害の程度を組織学的に検討した.人頭皮は, 落下距離が30cmより高くなると組織破壊が始まり, 40cmで組織は断裂し, 衝撃加速度曲線は bottoming をおこし, 緩衝能を失う. このさいの衝撃加速度値は100gを示した.加速度曲線の類似性より検討すると, 厚さ7mmの Viskol A-30® (チオコールゴム) は, 100gまでの範囲内では人頭皮の緩衝能とよく一致することがわかった. ただしゴム類では弾性限界は高い. 土, 発泡スチロールについても同様に実験を行ない, 人頭皮の simulation に関して若干の検討を加えた.
著者
益澤 秀明 平川 公義 富田 博樹 中村 紀夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.104-110, 2004-02-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
31
被引用文献数
2 4

交通事故による脳外傷後には,特徴的な知的障害・人格変化・社会適応障害が後遺しやすい.しかし,専門家も見過ごしやすいため社会問題になり,"高次脳機能障害"とよばれるようになった.しかし,この命名では従来からの高次脳機能障害と紛らわしく混乱が生じている.そこで"脳外傷による高次脳機能障害"とよぶことにした.本障害は外傷後の意識障害の期間と関連し,急速に生じる全般性脳室拡大の程度とも関連する.つまり,本障害はびまん性軸索損傷やその他のびまん性脳損傷によってもたらされる大脳白質損傷による神経ネットワークの障害と考えられる。画像所見変化に注目することにより非外傷性疾患との鑑別も容易であり,急性期管理に携わる脳神経外科医の眼が後遺症評価においても重要である.
著者
村上 成之 中村 紀夫 谷 諭
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.461-470, 1992-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

二輪車交通事故における頭部外傷のメカニズムを検討する目的で,臨床情報をふまえて事故後回収したヘルメット120例について分析を加えた。臨床データから頭部外傷の程度によって負傷者を軽症,重症,死亡に分類した。また,障害の内容も細分しそれぞれの延べ数を求めた。ヘルメットは外表の観察にとどめず,切断して衝撃吸収ライナーとして使用されている発泡スチロールの状態も検査した。この方法によりヘルメットの損傷部位と程度を評価した。ヘルメットが事故に際し脱落したもの(脱落例)では脱落しなかったもの(非脱落例)に比べ障害が重症となる傾向を示した。局所性脳損傷は脱落例で多いのに対し,びまん性脳損傷は脱落例,非脱落例で明らかな差はみられなかった。ヘルメットの分析結果から衝撃の強さと方向を推定し頭部外傷の傷害内容と比較したところ,急性硬膜下血腫ではヘルメットの辺縁部に前後方向から衝撃を受けた場合に生じやすく,びまん性軸索損傷は円蓋部に横方向から衝撃を受けた場合に生じやすかった。脳組織の損傷メカニズムとして,実験的に回転外力でびまん性脳損傷が生じやすいことが証明されている。ヘルメットの円蓋部を打ったときにびまん性軸索損傷が多かったのは,ヘルメットの円蓋部への衝撃では頭部の重心より上部に外力が加わり,辺縁部への衝撃に比べ回転外力が生じやすいためと考えられた。急性硬膜下血腫,脳挫創,びまん性軸索損傷などの重症の脳外傷はヘルメットの損傷の強い場合が多かった。ヘルメットにそのような損傷を来す外力がヘルメットを着用せず直接頭部に加わっていたならば,さらに重篤な脳損傷を来して死亡していた可能性が強いと推定された。したがって,重症度の軽減の面からはヘルメットは十分に脳保護作用を発揮していると考えられる。
著者
中村 紀夫
出版者
日本平滑筋学会
雑誌
日本平滑筋学会雑誌 (ISSN:03743527)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.245-262, 1970-12-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
9

This study presents a new technique to observe the structure of gastric smooth muscle layers by means of the combined use of “mucosa stripping technique” and “nitric acid treatment”. The mucosa stripping technique has been described elsewhere. After the procedure, the specimens are re-emersed into 20% nitric acid solution for 3 to 7 days. By the time, the muscle fibers contract tightly and the interstitial fibrous tissues become swollen and fragil, and they are easily removed by forceps in running water. Leaving muscle structure is solidly delineated.By this method, the author explored the detailed structure of three layers of gastric smooth muscles and individualized the special muscle bundles; namely, “anterior medial oblique muscle bundle”, “posterior medial oblique muscle bundle” and “border circular muscle bundle”. These muscle bundles constitute, so-called, “upper strain zone” in relation to the development of peptic ulcers at about the gastric angulus where almost all uclers locate.Special interest is emphasized on an existence of “lesser curvature longitudinal muscle bundle” which is confined to the area of upper strain zone and tapering off in gradual fusion with the circular muscle bundles. Although, the functional signfiicance of these muscle bundles remains for the future study.