著者
目須田 康 西澤 典子 松村 道哉 古田 康 福田 諭
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.358-361, 2005-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

性同一性障害は過去8年の間に本邦にても診断・治療が施行されるようになったが、音声の変化を望む症例に対する治療、特にMTF (male to female) に対するピッチ上昇手術はこれまでガイドラインに明確な定義がされていなかったこともあり、本邦における報告は極めて少なく、手術を強く希望する場合海外の施設を訪れている例があると推測される。今回われわれは東南アジアの某国でピッチ上昇手術を受け、帰国後発声開始後に高度の気息性発声を呈した例を経験した。肉芽切除と各種保存的治療が施行されたが手術後約5カ月の時点で患者の満足は得られていない。今後本邦でも各地で性同一性障害で音声変更を望む例が出現すると予想されるため、ピッチ上昇手術の適応の検討、またこの問題における関係各科との連携の重要性について改めて認識することが必要であると考えられた。
著者
目須田 康 本間 明宏 西澤 典子 折舘 伸彦 堂坂 善弘 古田 康 福田 諭
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6Supplement4, pp.S286-S290, 2006-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
17

近年上咽頭癌放射線治療後晩期に嚥下障害を来した例を3例経験した。症例は男性2例女性1例で、治療時年齢は20-41歳。2例は上咽頭癌に対する標準的な放射線治療を、1例は放射線化学併用療法を受けており、治療後8-15年で嚥下障害を発症した。全例両側舌下神経麻痺を中心として咽喉頭の感覚運動障害を有し、1例では補助栄養として間欠的口腔食道栄養法 (OE法) を指導し、1例では誤嚥性肺炎をコントロールするため誤嚥防止手術 (喉摘) を必要とした。末梢神経線維は一般に放射線抵抗性とされるが、過去の報告では放射線障害による脳神経障害に起因した誤嚥性肺炎で死亡する例も存在する。近年上咽頭癌に対し放射線化学併用療法が積極的に行われており、予後の改善と引き換えに晩期脳神経障害を背景にした嚥下障害が増加する可能性があることを、嚥下障害を担当する医療者や頭頸部腫瘍治療担当者は銘記する必要があろう。