著者
高木 大 福田 諭 中丸 裕爾 犬山 征夫 間口 四郎 飯塚 桂司
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.675-681, 2001-06-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
19

釧路地方におけるアレルギー性鼻炎患者についてCAP RASTの陽性率を検討した. また当地方の花粉の飛散状況もあわせて調査し, 札幌での報告と比較し, その地域特異性について検討した. 平成10年4月1日から平成12年3月31日までに市立釧路総合病院耳鼻咽喉科を受診した患者でアレルギー性鼻炎様症状を示し, CAPRASTを施行した結果, アレルギー性鼻炎の診断を下した107名を対象とした. また, 釧路地方でのシラカンバとイネ科花粉について飛散量を調査し, 札幌での飛散量と比較検討した. CAP RASTの結果は花粉類の陽性率ではオオアワガエリが22.4%と最も高く, 以下ハルガヤ17.7%, タンポポ15.0%, シラカンバ14.0%, ヨモギ12.1%, ハンノキ11.2%, ブタクサ8.4%の順であった. シラカンバ花粉の飛散量は釧路では5月下旬から6月上旬にかけて飛散のピークがみられた. 札幌では4月下旬から5月にかけて飛散がみられ, ピークは5月上旬頃であり, 釧路では約2週間程度ピークが遅れていた. また, シラカンバRAST陽性患者の初診月は6月が多く, 時期的にも一致していた. イネ科花粉の飛散時期は釧路地方では札幌に比し約1カ月遅れていた. 釧路地方の花粉症ではイネ科花粉症が最も多く, シラカンバがそれに次ぐ形になっており, シラカンバ花粉症が近年増加している札幌周辺とは若干異なった結果になった. これらの結果については釧路地方の気候等の地域的特徴が影響しているものと思われた.
著者
坂下 智博 本間 明宏 畠山 博充 水町 貴諭 加納 里志 古沢 純 飯塚 さとし 畑中 佳奈子 福田 諭
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.130-133, 2014 (Released:2014-08-07)
参考文献数
10

穿刺細胞診で悪性が確定しなかった場合にも画像的に甲状腺癌が疑わしいなどの理由により手術を行うことが少なくない。術後病理診断と画像所見との関係について比較し,どのような画像所見が癌予測因子として有用であるかについて検討した。対象は甲状腺腫瘍摘出を行ったもののうち,術前細胞診で悪性以外であった58症例。術前エコー検査所見(微細石灰化,辺縁不整,内部low echo,縦横比1以上,Haloの消失)が陽性であった場合に,術後病理で悪性であった陽性適中率(PPV),陰性であった場合に術後病理が良性であった陰性適中率(NPV)をそれぞれ算出した。前述した各エコー所見のそれぞれのPPVは74,89,71,89,65%。NPVはいずれの所見も51~58%にととどまった。辺縁不整および縦横比1以上がみられた場合のPPVは89%であり,これらの所見は有用な癌予測因子となりうると考えられた。
著者
長田 貴之 柴山 良彦 熊井 正貴 山田 武宏 笠師 久美子 倉本 倫之介 洲崎 真吾 赤澤 茂 真栄田 浩行 坂下 智博 折舘 伸彦 本間 明宏 福田 諭 菅原 満 井関 健
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.51-55, 2012-01-10 (Released:2013-01-10)
参考文献数
14

Intractable nausea and vertigo induced by opioid treatment are occasionally difficult to treat. It has been reported that antiemetic drugs and opioid rotation may be effective in treating nausea in such cases; however, this approach has been occasionally ineffective. Symptomatic treatment has not been developed for vertigo induced by opioid treatment. Here, we report a case study where combined treatment with perospirone and a histamine H1 receptor antagonist was used in 2 patients who developed intractable nausea and vertigo induced by opioid treatment. Treatment with a histamine H1 receptor antagonist drug (tablet form, containing 40 mg diphenhydramine salicylate and 26 mg diprophylline) suppressed the nausea and vertigo. However, increasing the opioid dosage exacerbated the symptoms, and treatment involving the histamine H1 receptor antagonist and opioid rotation was ineffective. Subsequently, combination treatment with the histamine H1 receptor antagonist (3 tablets per day) and perospirone (maximum daily dose, 16 mg) improved the symptoms. The results of the present study suggest that combination treatment with a histamine H1 receptor antagonist and perospirone might improve intractable nausea and vertigo induced by opioid treatment.
著者
水町 貴諭 加納 里志 原 敏浩 鈴木 章之 鈴木 清護 本間 明宏 折舘 伸彦 福田 諭
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.498-501, 2010-12-25 (Released:2010-12-28)
参考文献数
11
被引用文献数
4 1

中咽頭扁平上皮癌53例を対象にHPV感染と治療成績との関連について検討を行った。53例中14例(26%)がHPV陽性であったが,扁桃原発例に限れば19例中11例(58%)が陽性であった。HPV陽性14例中12例(86%)がHPV16陽性で,HPV18およびHPV58陽性が各1例みられた。疾患特異的5年生存率はHPV陽性例の方が陰性例に比べ有意に高い結果となった。放射線化学療法施行症例においてもHPV陽性例の方が陰性例に比べ有意に疾患特異的5年生存率は高い結果となり,HPV陽性例では11例全例局所は制御されたが,陰性例では22例中9(41%)が局所再発した。以上の結果から,中咽頭癌症例の治療成績の向上のためにはHPV感染の有無による層別化が必要であり,HPV陰性例では局所の制御が課題であると考えられた。
著者
武市 紀人 柏村 正明 中丸 裕爾 津布久 崇 福田 諭 鈴木 美華 宇佐美 真一
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.214-219, 2009 (Released:2009-09-18)
参考文献数
11

難聴遺伝子診断が有用であった1例を経験した。本例は成人両側感音難聴症例であるにもかかわらず, 現病歴, 家族歴が不明であり, 合併症である転換性障害による機能性難聴の可能性も否定できず, 診断と治療に苦慮した。難聴遺伝子診断によりGJB2遺伝子異常による遺伝性難聴の確定診断となり人工内耳埋め込み術を施行した。本例はGJB2遺伝子による難聴としては緩徐に進行した非典型例であったが, 人工内耳の装用効果は十分であり, 術前は困難であったテレビ視聴や単独での外出も可能となった。遺伝子診断は倫理的な課題も多く, 通常の検査と異なり専門医による十分な配慮, 準備が必要である。当院では遺伝子診療部が中心となり遺伝子に関する業務を行っており良好な検査の施行が行えた。難聴遺伝子診断は難聴患者の診断法として非常に有用と考えられるので今後のさらなる普及が望まれる。
著者
目須田 康 西澤 典子 松村 道哉 古田 康 福田 諭
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.358-361, 2005-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

性同一性障害は過去8年の間に本邦にても診断・治療が施行されるようになったが、音声の変化を望む症例に対する治療、特にMTF (male to female) に対するピッチ上昇手術はこれまでガイドラインに明確な定義がされていなかったこともあり、本邦における報告は極めて少なく、手術を強く希望する場合海外の施設を訪れている例があると推測される。今回われわれは東南アジアの某国でピッチ上昇手術を受け、帰国後発声開始後に高度の気息性発声を呈した例を経験した。肉芽切除と各種保存的治療が施行されたが手術後約5カ月の時点で患者の満足は得られていない。今後本邦でも各地で性同一性障害で音声変更を望む例が出現すると予想されるため、ピッチ上昇手術の適応の検討、またこの問題における関係各科との連携の重要性について改めて認識することが必要であると考えられた。
著者
目須田 康 本間 明宏 西澤 典子 折舘 伸彦 堂坂 善弘 古田 康 福田 諭
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6Supplement4, pp.S286-S290, 2006-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
17

近年上咽頭癌放射線治療後晩期に嚥下障害を来した例を3例経験した。症例は男性2例女性1例で、治療時年齢は20-41歳。2例は上咽頭癌に対する標準的な放射線治療を、1例は放射線化学併用療法を受けており、治療後8-15年で嚥下障害を発症した。全例両側舌下神経麻痺を中心として咽喉頭の感覚運動障害を有し、1例では補助栄養として間欠的口腔食道栄養法 (OE法) を指導し、1例では誤嚥性肺炎をコントロールするため誤嚥防止手術 (喉摘) を必要とした。末梢神経線維は一般に放射線抵抗性とされるが、過去の報告では放射線障害による脳神経障害に起因した誤嚥性肺炎で死亡する例も存在する。近年上咽頭癌に対し放射線化学併用療法が積極的に行われており、予後の改善と引き換えに晩期脳神経障害を背景にした嚥下障害が増加する可能性があることを、嚥下障害を担当する医療者や頭頸部腫瘍治療担当者は銘記する必要があろう。
著者
福田 諭 梶岡 慎輔 松尾 啓志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.17, pp.1-8, 2015-02-23

スマートフォンなどのモバイル端末の普及により,様々な場所や場面でのインターネットアクセスの需要が増加している.しかし災害時や発展途上国など,通信インフラを利用できない状況では,インターネットアクセスを実現することはできない.そこで Delay/Disruption Tolerant Networking(DTN) 技術を利用することで,より多くの場所や場面でインターネットアクセスを実現する手法が提案されている.DTN では,端末からのリクエストをマルチホップ無線通信とデータ運搬 (DTN ルーティング) によりインターネットに接続されたアクセスポイントへ転送する.サーバレスポンスは,一般には最初にリクエストを受信したアクセスポイントが DTN ルーティングにより端末へ配送する.しかしこの方法では,宛先端末に近いアクセスポイント以外へリクエストを転送する場合があり,このときレスポンスの配送遅延が増加するという問題が生じる.本稿では,適切なアクセスポイントがレスポンスを転送することで,レスポンスの配送遅延を削減する手法を提案する.計算機シミュレーションにより評価した結果,提案手法は既存手法と比べて,配送遅延を最大で 33% 削減,配送率を最大で 28% 向上できることを確認した.
著者
高須 毅 高木 摂夫 間口 四郎 福田 諭 犬山 征夫
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.805-809, 1991-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
15

鼻過敏症における, 心因, 自律神経の関与について知るため, 鼻アレルギー患者47名, 血管運動性鼻炎患者15名に, TOHO MEDICAL INDEX (TMI) を施行し, 以下の結論を得た.1. 鼻アレルギー患者と血管運動性鼻炎患者との間には, 神経症的傾向, 自律神経失調症的傾向に差は見られなかつた.2. 鼻過敏症患者は, 全身的な自律神経失調状態に傾いている傾向を見せた.3. 鼻過敏症患者では, 自覚症状が強い程, 自律神経性愁訴, 精神性愁訴が多く, 自律神経的, 精神的背景が自覚症状の重症化に関与している可能性があると思われた.4. 重症化, 難治化している鼻過敏症患者の状態を把握し, 治療方針を決定する上で, TMIは簡便で有用である.
著者
田中 克彦 福田 諭
出版者
Japan Otological Society
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.130-136, 1994-07-08 (Released:2011-06-17)
参考文献数
30

Viral infections are assumed to play an important etiologic role in sudden deafness but most evidence so far has been circumstantial. Correlating the cochlear locations and symptomes of sudden deafness, it is assumed that lesions of stria vascularis, primary neurons and tectorial membrane are able to accout for sudden onset and reversibility of the perceptive deafness.The survey of the previous reports on the experimental viral labyrinthitis suggests that paramyxoviruses such as mumps and Sendai viruses are the candidate of etiologic agents because of selective involvement of stria vascularis in a rather localized segment of the cochlea.Serological studies of the patients revealed that seroconversion was most frequent in 5 viral infections, e. g. mumps, rubeola, varicella-zoster, CMV and influenza B.In addition to primary viral infection, reactivation of herpes virus family is deemed as another possibility of sudden deafness.Detection of HSV-1 and varicella-zoster virus DNA or RNA in the human spiral ganglia appears a supportive evidence for reactivation of those viruses.
著者
柏村 正明 福田 諭 間口 四郎 樋口 栄作 犬山 征夫
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.254-259, 1995-02-20
被引用文献数
6 1

声門下喉頭癌27例について臨床的検討を行った. 5年生存率が44%と他の部位の喉頭癌に比べ不良であった. その原因として, 放射線治療後の局所再発率の高さが第一に考えられた. さらにsalvage operationの結果がT2で低く, 声門下喉頭癌の治療は他の喉頭癌より放射線治療の適応を厳しくし, 初めから手術を念頭においた治療計画が必要と思われた. またT1でも照射終了後の化学療法を考慮すべきと考えられた. また進行例では転移が多く初回治療後の化学療法の施行や, 喉頭全摘時の頸部郭清の施行により予後の改善に努めるべきと思われた. 縦隔への転移例は少なかったが実際にはもう少し多いと思われ, 慎重な経過観察が必要と思われた.