著者
森下 大樹 佐野 大佑 荒井 康裕 磯野 泰大 田辺 輝彦 稲毛 まな 折舘 伸彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.251-256, 2019-03-20 (Released:2020-04-08)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

Stress Velopharyngeal Insufficiency/Incompetence (SVPI; 吹奏楽器の演奏時のみ呼気が鼻腔より抜けることで演奏に支障を来す病態) の1例を経験したので報告する. 症例は19歳, 男性. クラリネット演奏時のみ鼻から空気が漏れ, 吹き続けられないため, 当科を受診した. ファイバースコピーでは, 頬ふくらまし時にアデノイドの小隆起の左側より呼気の漏出を認めた. 全身麻酔下, 上咽頭脂肪注入を施行したところ, 呼気の漏出と症状は消失し, 術後1年再発を認めていない. 本邦において耳鼻咽喉科医師の中でも認知度が低いと思われる SVPI について文献的考察を加え,症例提示する.
著者
髙尾 なつみ 榎本 浩幸 木谷 有加 田中 恭子 井上 真規 小林 眞司 折舘 伸彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.371-376, 2020-05-20 (Released:2020-06-05)
参考文献数
16

アデノイド切除術後の合併症として鼻咽腔閉鎖不全を来すことがあるが, 多くは保存的加療で消失する. 今回アデノイド切除術後に重度の開鼻声を生じ改善に外科的治療を要した一症例を経験した. 症例は5歳女児. 両側滲出性中耳炎, アデノイド増殖症に対し両側鼓膜チューブ留置術, アデノイド切除術を施行した.術後より聴力は改善したが, 開鼻声を来し発話明瞭度が低下した. 手術4カ月後から言語訓練を開始したが改善せず, 上咽頭ファイバースコピー, X 線所見より先天性鼻咽腔閉鎖不全症と診断し7歳9カ月で自家肋軟骨移植による咽頭後壁増量法を施行し症状は改善した. 術前予見可能性および発症後の対応について検討したので報告する.
著者
長田 貴之 柴山 良彦 熊井 正貴 山田 武宏 笠師 久美子 倉本 倫之介 洲崎 真吾 赤澤 茂 真栄田 浩行 坂下 智博 折舘 伸彦 本間 明宏 福田 諭 菅原 満 井関 健
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.51-55, 2012-01-10 (Released:2013-01-10)
参考文献数
14

Intractable nausea and vertigo induced by opioid treatment are occasionally difficult to treat. It has been reported that antiemetic drugs and opioid rotation may be effective in treating nausea in such cases; however, this approach has been occasionally ineffective. Symptomatic treatment has not been developed for vertigo induced by opioid treatment. Here, we report a case study where combined treatment with perospirone and a histamine H1 receptor antagonist was used in 2 patients who developed intractable nausea and vertigo induced by opioid treatment. Treatment with a histamine H1 receptor antagonist drug (tablet form, containing 40 mg diphenhydramine salicylate and 26 mg diprophylline) suppressed the nausea and vertigo. However, increasing the opioid dosage exacerbated the symptoms, and treatment involving the histamine H1 receptor antagonist and opioid rotation was ineffective. Subsequently, combination treatment with the histamine H1 receptor antagonist (3 tablets per day) and perospirone (maximum daily dose, 16 mg) improved the symptoms. The results of the present study suggest that combination treatment with a histamine H1 receptor antagonist and perospirone might improve intractable nausea and vertigo induced by opioid treatment.
著者
松浦 省己 生駒 亮 矢野 実裕子 松本 悠 羽田 華練 折舘 伸彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.124, no.3, pp.225-230, 2021-03-20 (Released:2021-04-03)
参考文献数
15

SAPHO 症候群の主な症状は皮膚症状と骨症状であり, 皮膚症状としては掌蹠膿疱症が多く, 骨症状は関節痛で胸肋鎖関節に多い. 治療は非ステロイド性抗炎症薬などによる対症療法が主体である. 近年, 口蓋扁桃摘出術により関節・皮膚症状が改善されたと報告されている. 今回われわれは, 口蓋扁桃摘出術により関節痛が著明に改善した SAPHO 症候群の一例を経験した. 症例は53歳, 男性. 急性扁桃炎, 掌蹠膿疱症の精査加療目的で入院. 掌蹠膿疱症と同時期発症の腰痛あり, CT, MRI, 骨シンチグラフィ所見から SAPHO 症候群と診断した. 退院後, 急性扁桃炎を再発, 掌蹠膿疱症の悪化と胸肋鎖関節痛が出現したため, 両側口蓋扁桃摘出術を施行. 術後は速やかに皮疹, 関節痛は軽快した.
著者
水町 貴諭 加納 里志 原 敏浩 鈴木 章之 鈴木 清護 本間 明宏 折舘 伸彦 福田 諭
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.498-501, 2010-12-25 (Released:2010-12-28)
参考文献数
11
被引用文献数
4 1

中咽頭扁平上皮癌53例を対象にHPV感染と治療成績との関連について検討を行った。53例中14例(26%)がHPV陽性であったが,扁桃原発例に限れば19例中11例(58%)が陽性であった。HPV陽性14例中12例(86%)がHPV16陽性で,HPV18およびHPV58陽性が各1例みられた。疾患特異的5年生存率はHPV陽性例の方が陰性例に比べ有意に高い結果となった。放射線化学療法施行症例においてもHPV陽性例の方が陰性例に比べ有意に疾患特異的5年生存率は高い結果となり,HPV陽性例では11例全例局所は制御されたが,陰性例では22例中9(41%)が局所再発した。以上の結果から,中咽頭癌症例の治療成績の向上のためにはHPV感染の有無による層別化が必要であり,HPV陰性例では局所の制御が課題であると考えられた。
著者
荒井 康裕 和田 昂 森下 大樹 高田 顕太郎 折舘 伸彦
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.194-202, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
20

非結核性抗酸菌は,結核菌以外の抗酸菌の総称で土壌,水,埃などの自然環境で増殖する環境寄生菌であるが,非結核性抗酸菌の一つであるMycobacterium abscessusによる非結核性抗酸菌性中耳炎の症例報告および文献レビューを報告した.症例は25歳女性で,Clarithromycinを中心とした抗菌薬治療を行い,抗菌薬の中止判断および聴力改善目的に手術を施行し,細菌学的な菌の消失を確認後,抗菌薬投与を中止した.聴力の気骨導差の改善を得ることができ,感染の再燃も認めていない.非結核性抗酸菌性中耳炎は稀な疾患であり,PubMedによる検索では,2018年までの期間に34の著者より119例の報告を認めた.非結核性抗酸菌性中耳炎の感染経路,デブリードメント手術の必要性,抗菌薬の選択および投与期間,聴力予後について,過去の文献のレビューおよび本報告との比較考察について報告した.
著者
湯田 惠子 佐久間 康徳 山下 ゆき子 折舘 伸彦
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-6, 2016 (Released:2019-02-13)
参考文献数
12

好酸球性中耳炎は難治性中耳炎であり、代表的な治療としてステロイドの鼓室内注入がある。今回、アスピリン喘息を合併する好酸球性中耳炎症例に対し、ケナコルトA®の鼓室内注入を行い、アナフィラキシーを呈した症例を経験したので報告する。症例は72歳、女性。10年前から難治性耳漏に対しケナコルトA®の鼓室内注入を定期的に施行していた。今回、外来にて注入を行った直後から呼吸困難などのアナフィラキシーを呈した。本稿では、アナフィラキシー発症の機序について若干の文献的考察を加えて報告する。

1 0 0 0 OA 先天性難聴

著者
荒井 康裕 西尾 信哉 折舘 伸彦 宇佐美 真一
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.131-136, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
5

先天性難聴の遺伝学的検査は2012年に保険収載されて以来,難聴の原因を明らかにし最適な医療を提供するために必要なツールとして全国の施設で実施されている.難聴遺伝学的検査のメリットには,1)難聴の正確な診断ができる,2)難聴の重症度や予後の予測ができ,めまいや糖尿病などの随伴症状の予想ができる,3)人工内耳を行うかどうか等の治療法選択の参考になる,などが挙げられる.2012年10月から2020年5月までの期間に当院において遺伝学的検査を施行した先天性難聴患者は119家系132名であり遺伝子変異検出率は41.7%(47家系56例)であった.難聴遺伝学的検査は,より早期の両側同時人工内耳手術の決定の際に非常に有用なツールと考えられた.また,進行性難聴における人工内耳植込の時期決定にも,難聴遺伝学的検査が有用であった.遺伝子診断後に注意すべき点として,遺伝子変異による難聴と診断した後も,慎重に難聴の経過を追うことが大切である症例が認められた.

1 0 0 0 OA がん免疫療法

著者
西村 剛志 加納 里志 佐久間 直子 佐野 大佑 小松 正規 折舘 伸彦
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.237-246, 2013 (Released:2013-12-26)
参考文献数
77

頭頸部癌患者に対する治療方針を決定する場合,現時点で免疫療法が第一選択の方針となることは極めて稀であるが,手術,放射線治療,化学療法との組み合わせで上乗せ効果を期待できる可能性がある。近年開発の著しい分子標的治療薬にも免疫学的知見が反映されており今後の飛躍的な治療成績の向上もあり得る。Biological response modifier (BRM) 製剤,養子免疫療法,ワクチン療法など現在利用可能と考えられる免疫療法と機序につき簡便に概説した。
著者
目須田 康 本間 明宏 西澤 典子 折舘 伸彦 堂坂 善弘 古田 康 福田 諭
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6Supplement4, pp.S286-S290, 2006-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
17

近年上咽頭癌放射線治療後晩期に嚥下障害を来した例を3例経験した。症例は男性2例女性1例で、治療時年齢は20-41歳。2例は上咽頭癌に対する標準的な放射線治療を、1例は放射線化学併用療法を受けており、治療後8-15年で嚥下障害を発症した。全例両側舌下神経麻痺を中心として咽喉頭の感覚運動障害を有し、1例では補助栄養として間欠的口腔食道栄養法 (OE法) を指導し、1例では誤嚥性肺炎をコントロールするため誤嚥防止手術 (喉摘) を必要とした。末梢神経線維は一般に放射線抵抗性とされるが、過去の報告では放射線障害による脳神経障害に起因した誤嚥性肺炎で死亡する例も存在する。近年上咽頭癌に対し放射線化学併用療法が積極的に行われており、予後の改善と引き換えに晩期脳神経障害を背景にした嚥下障害が増加する可能性があることを、嚥下障害を担当する医療者や頭頸部腫瘍治療担当者は銘記する必要があろう。
著者
野島 雄介 生駒 亮 松浦 省己 長岡 章平 長田 侑 折舘 伸彦
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.233-238, 2017-06-10 (Released:2017-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

口腔咽頭アフタを来たす疾患としては感染症が多いが, 膠原病を含む自己免疫性疾患など全身疾患に伴う口腔咽頭アフタも存在する. 今回我々は, 抗菌薬に反応しない口腔咽頭アフタを認め, 最終的に不全型ベーチェット病と診断した一例を経験した. ベーチェット病は, 口腔内アフタ, 皮膚症状, 外陰部潰瘍, 眼症状を主症状とする慢性炎症性疾患である. 予後は一般に良好であるが, ぶどう膜炎が発症した際には失明率が高いことから早期診断が望ましい. 本例のように抗菌薬が無効であり, ステロイド投与開始で症状の軽快, 投与中止で症状の増悪を繰り返す症例ではベーチェット病を鑑別に挙げ, 適切に他科と連携をとり診断, 治療に当たる必要がある.
著者
折舘 伸彦
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.45-52, 2011 (Released:2011-04-16)
参考文献数
22

日本消化器病学会の統一ガイドラインとして「消化性潰瘍」, 「炎症性腸疾患」, 「慢性膵炎」, 「胆石症」, 「肝硬変」のガイドラインとともに「胃食道逆流症 (GERD) 診療ガイドライン」が2009年11月発刊された. 日常診療において, 耳鼻咽喉科医は好むと好まざるとに関わらず, 咽喉頭症状を伴う胃食道逆流症患者の診療の一部を受け持たなければならないので, 本ガイドラインの概略を理解しておくことは有用であると考え, 胃食道逆流症の疫学, 病態, 診断, 内科的治療を紹介した. 食道外症状の一つである咽喉頭症状に関するCQ「GERDにより慢性咽喉頭炎 (自覚症状のみも含む) が生じることがあるか? 」へのステートメントは「GERDは咽喉頭炎, 咽喉頭症状の原因となることがあるが, 咽喉頭炎や自覚症状に対するプロトンポンプ阻害剤の効果は確定していない」である. さらに, 今回のガイドライン作成の文献検索期間後に論文発表された胃食道逆流による咽喉頭症状に対するプロトンポンプ阻害剤の効果を検討した無作為化臨床試験の成績を併せて紹介した.