著者
浜本 篤史 相原 佳之
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.63-78, 2009-12-23

本稿は、相模ダム(1947年竣工、以下同様)、城山ダム(1965年)、三保ダム(1979年)、宮ヶ瀬ダム(2001年)の神奈川県内4ダムを対象に、各事業における地域社会の関係とその変遷について全体像を捉えることを目的としている。とりわけ、各事例におけるダム住民移転補償とダム竣工後の地域活性化の在り方を、その組織体制および担い手に注目しながら把握していった結果、約50年のあいだに、外部環境の変化や直接当事者である移転者の高齢化のほかに、周辺住民、地元自治体の関与の仕方が変わりうるなど、それぞれの段階が存在することが把握された。このことは、移転者の生活再建とダム湖利用において高く評価されている宮ヶ瀬ダムであっても、その評価は竣工後10年しか経っていない現段階でのものにすぎないということを意味している。つまり、移転者の生活再建、ダム湖利用および水源地域活性化という課題は、特定の段階のみでその成否が評価されるべきではなく、今後さらに長いスパンで検討される必要性があることが示唆された。