- 著者
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浜本 篤史
- 出版者
- 観光学術学会
- 雑誌
- 観光学評論 (ISSN:21876649)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.2, pp.95-110, 2019 (Released:2021-09-30)
本研究では、日本において生じている中国人観光客のマナー問題について、宿泊予約サイトのクチコミ・データを用いて、問題認識や不満等を分析した。具体的には、「楽天トラベル」における18宿泊施設に対するクチコミデータ914件(2007年1月~2016年12月)を分析対象とし、テキストマイニングツールであるKH Coderを用いて、頻出語のピックアップや共起ネットワーク分析、対応分析等をおこなった。その結果、日本人宿泊客にとってマナー問題が生起するシーンと具体的状況は、部屋(騒音)、大浴場(入浴方法)、朝食会場(混雑・騒音・食べ漁り・席取り)、フロント前(混雑)にほぼ集約されることが確認された。また時系列的には、この十年間で中国人旅行客のマナー問題に対するクチコミは大きく変化していない。対応策としては、騒音や入浴マナーについて宿泊施設が注意喚起すべきという意見がまず多く、フロアや朝食会場を分ける提案も一定程度みられた。ほかに、宿泊施設スタッフの疲弊がしばしば観察されていることも把握されたが、マナー問題の責任主体が中国人旅行者自身なのか宿泊施設にあるとみなされているのかは、認識変化の有無も含めて慎重に見極める必要性があることも示唆された。