著者
相澤 高治 松田 雅弘
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A3O2059-A3O2059, 2010

【目的】<BR>本研究の目的はジャンプ能力と股関節筋力との関係性の検討である。ジャンプ能力と筋力との関係については、太田垣らが等速性膝屈伸筋力との相関があると報告しており、膝屈伸筋力に関しては同様な報告が多数ある。筆者らは第44回全国理学療法学術大会において、熊本らが提唱する機能別実効筋力とジャンプ能力との関係性を検討し、股関節屈筋筋力との関係性を示唆する報告を行なった。しかし、股関節筋力に関する報告は散見する程度であり、更なる検討が必要であると考えた。<BR>【方法】<BR>整形外科的疾患を有しない健常者16人(男性8人、女性8人、身長165.4±8.4 cm、体重59.9±8.7kg、平均年齢19.7歳)を対象とした。筋力測定にはBIODEX(SAKAImed製BDX-4)を用い、右脚の等速性股関節屈伸筋力を角速度60、180、300deg/secで各3回測定した。屈曲、伸展それぞれの最大値を体重で除してトルク体重比として算出した。ジャンプテストは片脚で行ない、全て右脚を測定脚とした。種類は垂直跳び、幅跳び、三段跳び、6mHopの4種目とした。垂直跳びはタッチ式測定法で測定し、着地は両脚とした。幅跳びは踏み切り時のつま先から着地時の踵までの距離を測定し、着地は両脚とした。三段跳びは踏み切り時のつま先から着地時の踵までの距離を測定した。3回連続で前方に跳び、最後の着地は両脚とした。6m Hopは6mの距離を出来るだけ素早くホップし、その時間を測定した。テストは2回実施し良値を採用した。上肢や反体側の下肢についての動作規定は設定しなかった。統計処理はSPSSver15(windows)を使用して4種目のジャンプ能力と股関節屈曲・伸展トルク体重比間における相関をPearsonの相関係数を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR>ヘルシンキ宣言に基づいて、研究内容の説明、被験者に対する不利益の排除、個人情報の保護を説明し、同意を得た上で実験を行なった。<BR>【結果】<BR>ジャンプ能力とトルク体重比で有意差のあった項目は以下の通りであった。垂直跳び:屈曲60deg/sec(r=0.49)、屈曲180deg/sec(r=0.67)、屈曲300deg/sec(r=0.83)。幅跳び:屈曲180deg/sec(r=0.54)、屈曲300deg/sec(r=0.75)。三段跳び:屈曲180deg/sec(r=0.62)、屈曲300deg/sec(r=0.75)。6mHop:屈曲180deg/sec(r=-0.50)、屈曲300deg/sec(r=-0.64)。伸展に関しては全てに有意差を認めなかった。<BR>【考察】<BR>股関節屈曲筋力と4種目のジャンプ能力との関係性が改めて確認された。小澤らは大腰筋の断面積と重心動揺との関係性の検討から大腰筋が前後方向のバランス能力に関与していると報告しており、また森田らも大腰筋訓練が片脚立位での前後左右方向のバランス能力に寄与したと報告している。本研究は全て片脚でジャンプ動作を行なっており、先の報告以上にバランス能力が求められたと推測される。このことから、股関節屈曲筋力とジャンプ能力の関係性にバランス能力が関与した可能性が示唆される。次に水平方向の要素が強い幅跳び、三段跳び、6mHopと股関節屈曲筋力との関係性で推測されることは着地姿勢への関与である。この3種目は下肢を前方に素早く屈曲させ、着地時に下肢が体幹の前方回転を制動すると推測される。つまり股関節屈曲筋力と着地姿勢形成能力が関係したと示唆される。一方、垂直跳びに関してはRobertsonが動作解析により、下肢伸展筋の貢献度を股関節40%膝関節24%足関節35%だと報告している。しかし今回の結果では伸展筋との相関は確認されず、異なる結果となった。ここで熊本らが提唱する協調制御モデルで考えてみる。モデルでは拮抗筋の同時収縮が系先端(足部)での出力方向制御を担うとされ、4種目とも股関節筋群が方向制御を担当する領域でtake-off時に出力していると推定される。股関節の伸展に拮抗するだけの屈曲筋力があることにより方向制御が可能となると考えられ、出力方向制御能力とジャンプ能力との関係性が示唆される。今後は股関節屈曲筋力とジャンプ能力との関係性は確認できたが、まだ推測の域をでないものが多く、動作の種類やフェーズとの関係性、協調制御モデルにもとづく解析方法の検討など、更なる検討が必要と思われる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>従来の報告は出力を生み出す膝関節に注目が集まり、ジャンプ能力と膝屈伸筋力との関係性に議論が集中していた。しかし私達の研究成果は、股関節屈曲筋力が関与するとされるバランス能力や出力方向制御能力がジャンプ能力と関係することを示唆するもので、他に報告はなく新規性が高い。
著者
相澤 高治 松田 雅弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.547-550, 2013 (Released:2013-10-08)
参考文献数
12

〔目的〕今回の研究目的は,切り返し動作を含むジャンプ動作と股関節筋力および膝関節筋力との関連性を検討した.〔対象〕下肢に整形外科疾患のない健常成人32名(平均年齢21.05歳)とし,被験者には事前に研究内容の説明を行い,同意を得た.〔方法〕等速性筋力測定器(BIODEX)を用いて股関節・膝関節の屈曲・伸展筋力を3回計測した.ジャンプ動作は利き足片脚で6 m HOPジャンプ,8字走ジャンプ,スラロームジャンプの3種類とし,そのゴールへの到達時間を測定した.筋力とジャンプの測定値をPearsonの相関を用いて検討した.〔結果〕股関節・膝関節筋力と3種類のジャンプに有意な相関が認められた.〔結語〕直線のジャンプ動作よりも切り替えしの多いジャンプ動作で筋力との関連があり,特に膝関節屈曲筋力との関連が最もみられた.
著者
相澤 高治 松田 雅弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.889-892, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

〔目的〕股関節屈伸筋力とジャンプ能力との関係について検討すること。〔対象〕整形外科的疾患のない健常成人男女16名を対象とした。〔方法〕等速性筋力測定器を用いて測定された角速度60,180,および300 deg/secでの股関節屈伸筋力のピークトルク体重比と,片脚での「垂直ジャンプ」,「前方ジャンプ」,「三段跳び」,および「6 m間跳躍時間」との関係をPearsonの相関係数により検討した。〔結果〕股関節屈曲筋力では角速度180,300 deg/secと4種目の片脚ジャンプすべてとの間に相関を認めた。角速度60 deg/secの股関節屈曲筋力と「垂直跳び」との間に相関を認めた。股関節伸展筋力では4種目の片脚ジャンプとの相関を認めなかった。〔結語〕股関節屈曲筋力が関与する姿勢制御能力や着地動作能力および出力方向制御とジャンプ能力が関係したと考えられる。