- 著者
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相馬 雅代
- 出版者
- 総合研究大学院大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2007
卵生の動物のメスにとって産卵量の調節は,限られた繁殖資源を配分投資し,自身とさらに子の適応度を最適化するという面で,重要な繁殖パラメータである.一般的に,卵1個に対する栄養投資量が多いほど子の生存率は高まる一方,メスには総投資量として大きな負担を強いることになる.また,一度の繁殖で産む卵は多いほうが,効率的に子の数を増やすことができ,適応度に寄与する可能性もあるが,他方で,育児・育雛のコストが大きくなり兄弟間競争が激化するぶん,メス自身や子の各個体にとって必ずしも利益となるとは限らない.そのため,産卵量の調節は,繁殖コンディションの影響を鋭敏に反映するのではないかと予測されている。このような産卵量の調節に関わるのが,繁殖コンディションやつがい相手オスの質である.ジュウシマツのような鳴禽類は,性淘汰形質として発声行動(歌)を求愛ディスプレイに用いる.そこでメスは,どのような歌をうたうオスとつがうと産卵投資を増加させるのか検討を行った.その結果,それぞれのメスがつがった相手の歌の音響特性が,初期発達期にさらされた歌とどれだけ似ているかどうかという指標が,卵重・一腹卵数・性比の増減に関連していた.メスの配偶投資に反映される選好性には,父親よりも,発達初期に社会交渉のあった非父親オスの歌の方が影響を与えていることが示唆された.このことは,初期聴覚記憶にもとづく性的刷り込み学習が繁殖投資に影響している一方で,近親交配を促進するような,すなわち父親の歌を選好するような傾向は無いことを示唆している.この結果については,学会において発表を行い,論文を準備中である.