著者
丸山 温 森川 靖
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.499-505, 1984-12-25
被引用文献数
9

ミズナラ, ダケカンバ, ウラジロモミの葉の水分特性の季節変化を調べた。いずれの樹種も, 生育期間中, 全水分量のおよそ15〜20%を失うと, 圧ポテンシャル(Ψ_p)が0になるようであった。Ψ_pが0になるときの水ポテンシャル(Ψ_w^<tlp>)および十分吸水したときの浸透ポテンシャル(Ψ_a^<sat>)は, いずれの樹種も新葉で高く, 新葉の成熟が進むにつれて低下した。夏季の雨の日が続いたあとの成熟葉のΨ_w^<tlp>, Ψ_s^<sat>は, ミズナラ, ダケカンバで高い値を示した。これらの樹種のΨ_w<tlp>, Ψ_s<sat>は, 9月以降徐々に低下した。一方, ウラジロモミのこれらの値は夏季のあいだほぼ一定であったが, 9月以降は徐々に低下した。細胞の体積弾性率(ε)は, ミズナラ, ダケカンバでは新葉で低く, 成熟葉で高かったが, ウラジロモミでは逆に, 新葉で高く成熟葉で低かった。落葉前のεは, ミズナラでは上昇したが, ダケカンバでは低下した。成熟葉の水分特性を樹種間でくらべると, ダケカンバで水分量の低下に対するΨ_pの低下が著しかった。また, ダケカンバのΨ_w^<tlp>, Ψ_s<sat>は最も高く, Ψ_wに対するΨ_pは最も低かった。
著者
水野 歩 丸山 温 相馬 雅代
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.67-71, 2019-04-23 (Released:2019-05-14)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

ハシブトガラス Corvus macrorhynchosはヒトにとって身近で馴染み深い存在にも関わらず,その生活史や行動,認知について未解明な部分が多い.本研究では,ハシブトガラスの貯食行動における貯食場所の選好性に焦点を当て観察した.その結果,ハシブトガラスは貯食場所として樹高の高い常緑針葉樹の樹冠部を好むことが明らかになった.このことは,ハシブトガラスが貯食時にエサを隠すのにより有利な場所を選択していることを示唆している.
著者
丸山 温 松本 陽介 森川 靖
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.427-432, 1996-11-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
21

樹冠上部の葉は,重カポテンシャル差によって常に下部と比べて乾燥状態におかれている。'この乾燥に対する適応を明らかにするため,スギ成木の梢端部と最下部の葉について,水分特性と形態的特徴の季節変化を調べた。梢端部の葉では,圧ポテンシャル(Ψp)を失うときの水ポテンシャル(ψWtip),飽水時の浸透ポテンシャル(ψSsat)が最下部と比べて低く,Ψpを維持しやすい特徴を持っていた。また,梢端部の葉では空隙の発達が抑制され,葉の単位体積当りの水分量も最下部と比べて多かった。すなわち,水分特性だけでなく,形態的にも梢端部の葉は乾燥に適応しており,このことがスギが高い樹高まで育つ重要な要因になっていると考えられる。
著者
小池 孝良 笹 賀一郎 日浦 勉 高木 健太郎 牧野 周 丸山 温 船田 良
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

冷温帯葉落広葉樹の光合成生産機能を,森林を構成する高木の機能を樹冠レベルで評価するとともに,ギャップ更新稚樹や低木層構成樹種の光合成特性を基礎に考察した。樹冠部の光合成特性は林冠層をやや越えた高さ24mの樹冠観測タワーを用いて測定した。上層木の開葉と共に林床へ到達する光量は減少し,落葉とともに増加した。また,CO_2濃度の垂直変化は,風のない日中に樹冠部位では約320ppmまで低下し,夕方には林床付近で約560ppmに達した。高木層の開葉は雪解けの約1週間後から始まり樹冠基部から先端に向かって進行した。シラカンバやケヤマハンノキなどの散孔材樹種の開葉が早く,ハリギリやヤチダモなどの環孔材では約2週間遅かった。初夏には全ての樹種の樹冠部位での光合成速度は高かったが,真夏には樹冠のやや内部に位置する葉の光合成速度が最高であった。落葉が始まる初秋には先駆種であるシラカンバとケヤマハンノキの光合成速度は高かったが,全体としては樹冠部位での光合成速度に樹種間の差はなかった。樹冠下部の葉では集光機能を代表するクロロフィルb量が多く,また,窒素のクロロフィルへの分配量も多かった。林床では上層木の葉が展開して林冠が閉鎖する前に葉を展開し終える樹種や,上層木が落葉しても葉を保持し降霜まで緑葉を維持する樹種が存在した。林床に生育する稚樹では,光飽和での光合成速度(最大光合成速度)は大きな年変動を示した。この原因として春先の乾燥により厚く小さな葉が形成されることが考えられ,葉内部でのCO_2拡散抵抗が最大光合成速度を律速することが示唆された。窒素は最大光合成速度と高い正の相関を持つことから,非破壊で同一葉の機能を推定できる窒素計測器を導入することによって樹冠全体の光合成生産を非破壊で推定できる。