著者
眞壁 明子
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

富栄養化に対する窒素除去能として脱窒過程が重要であり、硝酸の窒素安定同位体比を用いた解析手法が発展してきたが、複雑な窒素循環解析には適応限界があり、また、浄化能としてだけではなく温暖化ガスである一酸化二窒素の挙動も同時に評価する必要がある。本研究では、窒素酸化物(硝酸、亜硝酸、一酸化二窒素)の酸素安定同位体比に着目し、微生物培養実験及び湖沼における観測から、新たな窒素循環解析手法を確立することを目的とした。本年度は、微生物培養実験については、アンモニア酸化細菌及び脱窒菌の培養実験を行った。両実験ともに、多種窒素化合物の同位体比を測定するための、培養条件及び測定前処理法を確立するのに試行錯誤を要し、酸素安定同位体比についての明確な情報を得るという観点からは、予備的な実験に留まった。しかし、本年度の実験により実験条件を確立することができたので、今後、目的の実験を速やかに行い成果としてまとめる予定である。また、湖沼における調査については、昨年度までに長野県にある木崎湖及び深見池において窒素酸化物及び水・溶存酸素のサンプリングを行い、試料の一部については安定同位体比の測定を終えていた。本年度は、未測定試料の測定を行い、硝化・脱窒及び一酸化二窒素生成メカニズムについて酸素安定同位体比を中心に解析を行った。同位体比を含んだ窒素循環の鉛直一次元モデルの応用にも取り組み、現在投稿論文を執筆している段階である。