著者
大野 彰久 眞柴 寿枝 青野 通子 丹下 和洋 越智 裕紀 武智 俊治 横田 智行 上甲 康二
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.481-486, 2016-09-20 (Released:2016-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は20歳代男性.倦怠感と心窩部不快感を主訴に受診し,血液検査でT.Bilと肝胆道系酵素の上昇を認めた.肝炎ウイルスマーカーは陰性で,自己免疫性肝疾患なども否定的だった.画像検査で器質的疾患を疑う所見もなかった.漢方薬の内服歴があり,入院時より腹部に褐色調の皮疹が認められたため薬物性肝障害を考え経過観察した.肝生検組織では急性肝炎と診断し,薬物性肝障害として矛盾しない所見だった.肝胆道系酵素異常は遷延し,腹部の皮疹が上腕・大腿にも拡大した.再度詳細に問診を行うと不特定の性交渉歴があり,血液検査を追加し,早期梅毒と判明した.Amoxicilin 750 mg/dayの内服で,皮疹の改善とともに遷延していた肝胆道系酵素異常は速やかに正常化した.近年,梅毒感染者は増加傾向にあり,特に若年層での感染が目立つ.皮疹を伴う原因不明の肝障害患者では,梅毒性肝炎も念頭に入れるべきだと思われた.
著者
平岡 淳 道堯 浩二郎 重松 秀一郎 眞柴 寿枝 熊木 天児 徳本 良雄 長谷部 昌 日浅 陽一 堀池 典生 恩地 森一
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.609-613, 2004-11-25
被引用文献数
5 5

症例は56歳男性. アルコール性肝硬変. 平成15年8月より全身倦怠感を自覚. 同年10月より体重増加. 11月8日より39度台の発熱が出現し, 近医入院. 同14日当科入院. WBC 7700/μ<i>l</i>, Hb 8.8g/d<i>l</i>, Plt 5.2万/μ<i>l</i>, PT 46.1%, T-Bil 4.8mg/d<i>l</i>, AST 129IU/<i>l</i>, ALT 59IU/<i>l</i>, γ;-GTP 27IU/<i>l</i>, Alb 2.5g/d<i>l</i>, 入院当初より左腰背部痛を軽度自覚. 入院後, 肝不全に対して保存的に加療を行ったが, 貧血が進行した. 下血はなく, 上部消化管内視鏡では明らかな出血はなかった. 第6病日, 腹部造影CTにて左腸腰筋の軽度腫大が描出された. 再検前にショックに陥り第7病日死亡. 剖検にて左腸腰筋血腫と診断された. 肝硬変に合併した特発性腸腰筋血腫は稀であるが, 貧血が進行する肝硬変患者における鑑別として重要である.