著者
能津 昌平 道堯 浩二郎 平岡 淳 相引 利彦 奥平 知成 山子 泰加 岩﨑 竜一朗 富田 英臣 壷内 栄治 二宮 朋之
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.421-426, 2018-08-20 (Released:2018-09-14)
参考文献数
25
被引用文献数
3 3

症例は75歳男性.1958年にてんかんと診断されてバルプロ酸を含む抗てんかん薬開始.2011年にγ-GTP高値と高アンモニア血症を指摘.血液検査,腹部エコー,腹部造影CTで肝硬変を示唆する検査値や所見は認められなかった.カルニチンは著明な低値を示しており,バルプロ酸によるカルニチン欠乏症に続発した高アンモニア血症と診断した.レボカルニチン投与開始後,血中カルニチン濃度,血中アンモニア値,自覚症状の改善が認められた.バルプロ酸投与例では高アンモニア血症に留意するとともにカルニチンを測定してカルニチン補充療法の適応を判断すべきと考えられた.
著者
山子 泰加 道堯 浩二郎 白石 明子 相引 利彦 奥平 知成 川村 智恵 中原 弘雅 須賀 義文 畔元 信明 平岡 淳 宮田 英樹 宮本 安尚 二宮 朋之 田中 光一 安中 哲也 楳田 祐三 八木 孝仁
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.749-755, 2014-12-20 (Released:2015-01-07)
参考文献数
15

症例は20歳男性.全身倦怠感を主訴に近医を受診し,発熱,黄疸がみられたため精査加療のために当科へ紹介された.受診するまでの約3年間ひきこもり状態であり,家族と同居していたが,家人と接することが少なかったため家人は病状に気づかなかった.各種検査からWilson病による肝不全と診断し,保存的加療を行ったが軽快せず,生体肝移植を行った.移植後は経過良好で,現在外来通院中である.Wilson病は多彩な精神,神経症状を示しうる疾患であり,ひきこもりにて肝不全の発見が遅れたWilson病の1例を経験したため報告する.
著者
恩地 森一 道堯 浩二郎 堀池 典生
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.518-523, 2006 (Released:2007-02-21)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1
著者
井上 学 道堯 浩二郎 高橋 和明 安倍 夏生 岡 清仁 布井 弘明 上田 晃久 島瀬 公一 日浅 陽一 堀池 典生 三代 俊治 恩地 森一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.459-464, 2006 (Released:2007-01-29)
参考文献数
24
被引用文献数
12 11

症例は,54歳の女性.全身倦怠感と黄疸と肝機能異常(T.Bil 2.9mg/dl, AST 1143IU/l, ALT 1767IU/l, γ-GTP 158U/l)により急性肝炎と診断.入院後,安静のみで経過観察し,劇症化,遷延化することなく軽快退院した.海外渡航歴,薬剤服用歴はなく,A, B, C型肝炎ウイルスマーカー陰性,抗核抗体陰性.発症1カ月前にイノシシ肉を摂取していたため,E型肝炎ウイルス(HEV)マーカーを測定したところ,IgM型HEV抗体及びHEV-RNAが陽性であり,急性E型肝炎と診断した.HEV genotypeは3型であった.当初はイノシシ肉の摂食による感染が疑われたが,調理行為により感染した可能性も考えられた.海外渡航歴のない国内発症の急性E型肝炎としては,本例が四国からの初報告例となる.
著者
道堯 浩二郎 平岡 淳 鶴田 美帆 相引 利彦 奥平 知成 山子 泰加 寺尾 美紗 岩﨑 竜一朗 壷内 栄治 渡辺 崇夫 吉田 理 阿部 雅則 二宮 朋之 日浅 陽一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.14-22, 2019-01-18 (Released:2019-01-23)
参考文献数
28

肝疾患におけるカルニチン,亜鉛低下例の頻度と他の肝代謝マーカーとの関連を明らかにすることを目的とした.慢性肝炎(CH)41例,肝硬変(LC)88例(肝細胞癌非合併群60例,合併群28例)を対象に,カルニチン,亜鉛,アンモニア,BTR(BCAA/Tyr),アルブミン(Alb)を測定し,低下例の頻度と互いの関連を検討した.カルニチン高度低下例はなく,軽度低下例はLCの23.9%にみられ,うち42.9%はアシルカルニチン/遊離カルニチン比>0.4での基準合致例であった.亜鉛高度低下例はCH 0%,LC 30.7%,軽度低下例はCH 31.7%,LC 40.9%にみられた.アシルカルニチンと亜鉛はアンモニア,BTR,BCAAと相関があったが,遊離カルニチンはこれらと相関はなかった.以上よりカルニチンと亜鉛は慢性肝疾患例の一部で低下し,両者の動態と肝代謝マーカーとの関連には差異がみられた.
著者
阿部 敏紀 相川 達也 赤羽 賢浩 新井 雅裕 朝比奈 靖浩 新敷 吉成 茶山 一彰 原田 英治 橋本 直明 堀 亜希子 市田 隆文 池田 広記 石川 晶久 伊藤 敬義 姜 貞憲 狩野 吉康 加藤 秀章 加藤 将 川上 万里 北嶋 直人 北村 庸雄 正木 尚彦 松林 圭二 松田 裕之 松井 淳 道堯 浩二郎 三原 弘 宮地 克彦 宮川 浩 水尾 仁志 持田 智 森山 光彦 西口 修平 岡田 克夫 齋藤 英胤 佐久川 廣 柴田 実 鈴木 一幸 高橋 和明 山田 剛太郎 山本 和秀 山中 太郎 大和 弘明 矢野 公士 三代 俊治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.384-391, 2006-08-25
被引用文献数
18 56

極く最近まで殆んど不明状態にあった我国のE型肝炎の実態を明らかにする目的で,我々は全国から総数254例のE型肝炎ウイルス(HEV)感染例を集め,統計学的・疫学的・ウイルス学的特徴を求めてこれを解析した.その結果,[i]HEV感染は北海道から沖縄まで全国津々浦々に浸透していること;[ii]感染者の多くは中高年(平均年齢約50歳)で,且つ男性優位(男女比約3.5対1)であること;[iii]我国に土着しているHEVはgenotype 3とgenotype 4であるが,後者は主に北海道に偏在していること;[iv]年齢と肝炎重症度との間に相関があること;[v]Genotype 3よりはgenotype 4による感染の方が顕性化率も重症化率も高いこと;[vi]発生時期が無季節性であること;[vii]集積症例全体の約30%は動物由来食感染,8%は輸入感染,2%は輸血を介する感染に帰せしめ得たものの,過半の症例(約60%)に於いては感染経路が不明のままであること;等の知見を得た.<br>
著者
村田 洋介 阿部 雅則 道堯 浩二郎 松原 寛 舛本 俊一 山下 善正 堀池 典生 恩地 森一
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.1186-1190, 2002-08-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は53歳,女性.初回入院時,抗ミトコンドリア抗体陰性.腹腔鏡では,溝状および広範陥凹があり,肝組織では広範壊死がみられた.自己免疫性肝炎(AIH)と診断,副腎皮質ステロイドの投与を開始.その後,胆道系酵素の上昇がみられた.第2回目の腹腔鏡では,陥凹所見は改善.肝組織では非化膿性破壊性胆管炎がみられた.AIHの経過中に原発性胆汁性肝硬変が顕在化し,その経過を腹腔鏡で観察しえたので報告する.
著者
道堯 浩二郎 平岡 淳 鶴田 美帆 相引 利彦 奥平 知成 山子 泰加 岩﨑 竜一朗 壷内 栄治 渡辺 崇夫 吉田 理 阿部 雅則 二宮 朋之 日浅 陽一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.641-646, 2018-11-20 (Released:2018-11-28)
参考文献数
16

HBs抗原の測定法が改良され検出感度が高くなっているが,HBs抗原低値陽性例では偽陽性が危惧される.偽陽性の疑われる例を判定困難例とし,HBs抗原濃度別の判定困難例の頻度を明らかにすることを目的とした.41,186検体を対象にHBs抗原を化学発光免疫測定法で測定し,後方視的に検討した.判定困難例の基準をHBc抗体,HBe抗原・抗体,HBV-DNAすべて陰性,後日採血された検体でHBs抗原が陰性,の全条件を満たす例とし,HBs抗原濃度別の判定困難例の頻度を検討した.HBs抗原は1,147検体(2.8%)で陽性であった.判定困難例は6検体で,HBs抗原濃度(IU/ml)は,全例0.05以上0.20未満であり,0.20以上例には基準を満たす例はなかった.以上より,HBs抗原低値陽性例は偽陽性の可能性に留意する必要があることが示唆された.
著者
道堯 浩二郎 恩地 森一 灘野 成人 堀池 典生 太田 康幸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.2210-2214, 1989 (Released:2007-12-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

肝組織内DNAポリメラーゼα (DNA-Pα) をモノクローナル抗体を用いて検出し, 各種肝疾患の肝細胞増殖動態について検討した. 肝細胞1000個に対するDNA-Pα陽性肝細胞数は, hospital control では平均1個であつたのに対し, 急性肝炎, 慢性肝炎, 肝硬変ではいずれも平均約20個に増加していた. また, 肝細胞癌では平均約500個と著明に増加していた. 慢性活動性肝炎は慢性非活動性肝炎よりDNA-Pα陽性肝細胞が多く, piecemeal necrosis, 巣状壊死の高度な例では軽度例に比べDNA-Pα陽性細胞が多く認められた.
著者
平岡 淳 畔元 信明 白石 明子 今井 祐輔 達川 はるか 山子 泰加 二宮 朋之 河崎 秀樹 広岡 昌史 日浅 陽一 道堯 浩二郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.563-566, 2013 (Released:2013-09-02)
参考文献数
5

Aim/background: Prognosis of hepatocellular carcinoma with extrahepatic metastasis (IVb) was reported less than 6 months. Sorafenib (NEX) is an only established therapy for IVb. We evaluated the clinical factors of IVb treated with NEX for prolonging prognosis. Method/Patients: Clinical backgrounds of 23 IVb were investigated (Average age; 66.4 years old), retrospectively. Results: All were Child-Pugh A. In 8 cases, NEX was continued after progressive disease (PD). One year survival rate of them were 58% and average period of treating with NEX beyond PD was 327 days. There was a tendency that NEX was abandoned in IVb with portal vein tumor thrombosis (PVTT) at early timing. Conclusion: Continuing NEX after becoming beyond PD can be a therapeutic option to improve the prognosis in IVb without PVTT.
著者
平岡 淳 道堯 浩二郎 重松 秀一郎 眞柴 寿枝 熊木 天児 徳本 良雄 長谷部 昌 日浅 陽一 堀池 典生 恩地 森一
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.609-613, 2004-11-25
被引用文献数
5 5

症例は56歳男性. アルコール性肝硬変. 平成15年8月より全身倦怠感を自覚. 同年10月より体重増加. 11月8日より39度台の発熱が出現し, 近医入院. 同14日当科入院. WBC 7700/μ<i>l</i>, Hb 8.8g/d<i>l</i>, Plt 5.2万/μ<i>l</i>, PT 46.1%, T-Bil 4.8mg/d<i>l</i>, AST 129IU/<i>l</i>, ALT 59IU/<i>l</i>, γ;-GTP 27IU/<i>l</i>, Alb 2.5g/d<i>l</i>, 入院当初より左腰背部痛を軽度自覚. 入院後, 肝不全に対して保存的に加療を行ったが, 貧血が進行した. 下血はなく, 上部消化管内視鏡では明らかな出血はなかった. 第6病日, 腹部造影CTにて左腸腰筋の軽度腫大が描出された. 再検前にショックに陥り第7病日死亡. 剖検にて左腸腰筋血腫と診断された. 肝硬変に合併した特発性腸腰筋血腫は稀であるが, 貧血が進行する肝硬変患者における鑑別として重要である.