著者
眞次 康弘
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.250-254, 2021-12-15 (Released:2022-01-15)
参考文献数
25
被引用文献数
2

Enhanced recovery after surgery(ERAS)はエビデンスのある周術期管理方策をパッケージ化して実施し,合併症を減らして術後の機能回復促進を目的とする.ERASは現代医療ニーズにフィットするが欧州の医療システムに即して開発されてきたため,医療費抑制と包括ケアおよび急性期/回復期医療の役割分担を強化している.ESSENSEはERASをわが国で展開するためにその問題点を整理し,患者視点も重視して開発された.膵頭十二指腸切除術のERASプログラムは大腸手術プログラムから派生したものであり,これまでの報告から,ERAS実装は安全で入院期間短縮と一般合併症減少が期待できることはほぼ証明された.しかし,術後膵液瘻などの臓器・手術固有の合併症リスクはERASで制御することは困難であり,代謝ストレス制御は容易ではなく,早期経口栄養を開始できても必要量を充足できるとは限らない.エビデンス構築が十分でない推奨事項もある.総合評価指標と認知されている在院日数を第一義的に追求するのではなく,疾患に応じた科学的・病態生理学的原則に沿って運用することが重要である.
著者
延原 浩 眞次 康弘 伊藤 圭子 板本 敏行
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.165-174, 2017 (Released:2018-02-22)
参考文献数
54
被引用文献数
2

周術期口腔ケアは術後肺炎や口腔癌の手術部位感染(SSI)予防に効果があるといわれてきた.心臓外科や整形外科領域におけるSSI 予防効果を示す報告は散見するが,消化器外科におけるSSI など感染性合併症予防効果の報告は少なく不明な点が多い.消化器外科手術のなかでも外科的侵襲が大きく,術後合併症が多いとされる膵頭十二指腸切除術に対して術前から口腔ケアを実施すると,感染性合併症の減少を認めた.口腔細菌が全身に影響を及ぼす機序として,気管や消化管への直接移行,局所からの血行性・リンパ行性移行,エンドトキシンや炎症性サイトカインによる影響などが報告されている.消化器外科手術においては,消化管に流入する細菌の量的かつ質的制御,口腔内感染症の術前治療などが感染性合併症減少につながった可能性がある.今後,さらなる有効性の検証や,より効果的な口腔ケア介入方法の検討が望まれる.
著者
眞次 康弘 中塚 博文 豊田 和広 小川 尚之 大城 久司
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.1452-1456, 2001-09-01
被引用文献数
26

原発性虫垂癌5例を経験した.当院における虫垂癌の頻度は切除虫垂の2.02%(247例中)切除大腸癌の1.39%(361例中)であった.(1986年7月〜2000年3月)内訳は男性3例, 女性2例, 平均年齢59.2歳.術前診断は虫垂炎4例, 虫垂粘液瘤1例, 組織診断は通常型腺癌3例, 嚢胞型腺癌2例であった.術式は回盲部切除3例, 結腸右半切除2例, 虫垂切除後2期的手術が3例であった.虫垂癌の早期発見には虫垂炎症例に対し術前画像検査, 術中の注意深い検索, 術後の病理組織学的検索を行うことが重要である.術式では浸潤癌にリンパ節郭清を伴う根治手術を, 術前診断の困難な早期虫垂癌に対して虫垂切除を行うことは矛盾はないと考えられた.追加手術としてsm癌は浸潤癌に準ずる手術を, m癌は断端陰性かつ断端処理が可能であれば虫垂切除術でよいと考えられたが, まだ症例数が少なく今後さらなる症例の蓄積と予後調査が必要である.