著者
豊田 和広 楠部 潤子 高橋 忠照 池田 昌博 徳本 憲昭
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.137-140, 2008 (Released:2008-10-02)
参考文献数
10

消化管のストーマはクリーブランドクリニックの原則に基づき臍を避けた下腹部に造設されることが多いが,臍部にストーマを造設し良好なケアができた症例を経験した.症例は74歳,女性.既往に慢性腎不全,貧血,洞不全症候群,慢性心不全,脳梗塞後遺症が存在した.横行結腸癌による大腸閉塞で入院となったが全身麻酔下に切除術を行うにはリスクが高いと判断し,局所麻酔下に横行結腸双孔式ストーマ造設術を行うこととした.患者は小柄痩せ型であり,面板が貼付できる平面を得ること,ほぼ寝たきり状態であることなどを考慮し臍部にストーマを造設した.術後経過は良好で,家族によるストーマケアができるようになり退院された.近年結腸ストーマを造設する機会は減少したが,症例によっては臍部がストーマ造設部位の良い選択肢になりうると考えられた.
著者
高倉 有二 高橋 忠照 貞本 誠治 豊田 和広 池田 昌博 中谷 玉樹
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.1428-1432, 2006-06-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

症例は69歳の女性で,右鼠径部の膨隆を主訴に受診した.右大腿ヘルニアの嵌頓にて緊急で嵌頓解除,ヘルニア根治術を施行した.ヘルニア内容は腫瘤性病変であったが,壊死状であり,確定診断がつかなかったため,悪性腫瘍の腹膜播種を疑って再手術を施行した.腹腔内には回盲部や骨盤を中心に多数の腫瘤を認めた.両側卵巣は正常大であった.切除不能と判断し腫瘍生検のみ行い手術を終了した.組織学的には卵巣の漿液性乳頭状腺癌に類似しており腹膜原発漿液性乳頭状腺癌と診断した.腹膜原発漿液性乳頭状腺癌は腹膜原発の稀な疾患で,多くの場合腹水貯留による腹部膨満感が初発症状となる.腫瘍のヘルニア嵌頓で発見されることは稀であり,ヘルニア内容がはっきりしない場合は本症例のような腹膜原発の悪性疾患も考慮すべきである.
著者
眞次 康弘 中塚 博文 豊田 和広 小川 尚之 大城 久司
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.1452-1456, 2001-09-01
被引用文献数
26

原発性虫垂癌5例を経験した.当院における虫垂癌の頻度は切除虫垂の2.02%(247例中)切除大腸癌の1.39%(361例中)であった.(1986年7月〜2000年3月)内訳は男性3例, 女性2例, 平均年齢59.2歳.術前診断は虫垂炎4例, 虫垂粘液瘤1例, 組織診断は通常型腺癌3例, 嚢胞型腺癌2例であった.術式は回盲部切除3例, 結腸右半切除2例, 虫垂切除後2期的手術が3例であった.虫垂癌の早期発見には虫垂炎症例に対し術前画像検査, 術中の注意深い検索, 術後の病理組織学的検索を行うことが重要である.術式では浸潤癌にリンパ節郭清を伴う根治手術を, 術前診断の困難な早期虫垂癌に対して虫垂切除を行うことは矛盾はないと考えられた.追加手術としてsm癌は浸潤癌に準ずる手術を, m癌は断端陰性かつ断端処理が可能であれば虫垂切除術でよいと考えられたが, まだ症例数が少なく今後さらなる症例の蓄積と予後調査が必要である.