著者
黒川 駿哉 岸本 泰士郎 真田 健史 三村 將
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.55-59, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
21

腸内細菌叢とその代謝産物が,腸を介して脳に作用し,相互に影響し合うという腸内フローラ‐腸‐脳軸(microbiota‐gut‐brain axis)が注目されている。自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)は精神神経科領域において,microbiota‐gut‐brain axisについての報告が最も多い疾患の一つである。健常と比べてASDでは特定の菌種・構成パターンの違いや多様性の乱れ(dysbiosis)が報告されている一方で,このdysbiosisを復する目的で,腸内細菌叢移植(fecal microbiota transplantation:FMT)などの新しい試みについての報告も出てきている。本稿では,最新の腸内細菌叢の観察研究および介入研究について紹介し,治療応用や病態理解の可能性など今後の展望について述べる。