著者
黒川 駿哉 岸本 泰士郎 真田 健史 三村 將
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.55-59, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
21

腸内細菌叢とその代謝産物が,腸を介して脳に作用し,相互に影響し合うという腸内フローラ‐腸‐脳軸(microbiota‐gut‐brain axis)が注目されている。自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)は精神神経科領域において,microbiota‐gut‐brain axisについての報告が最も多い疾患の一つである。健常と比べてASDでは特定の菌種・構成パターンの違いや多様性の乱れ(dysbiosis)が報告されている一方で,このdysbiosisを復する目的で,腸内細菌叢移植(fecal microbiota transplantation:FMT)などの新しい試みについての報告も出てきている。本稿では,最新の腸内細菌叢の観察研究および介入研究について紹介し,治療応用や病態理解の可能性など今後の展望について述べる。
著者
﨑下 雅仁 小川 ちひろ 土屋 賢治 岩渕 俊樹 岸本 泰士郎 狩野 芳伸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.B-J45_1-11, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)
参考文献数
28

In recent years, population with autism spectrum disorder (ASD) are growing explosively, and diagnosis of ASD is difficult due to difference of interviewers and environments, etc. We show relations between utterance features and ASD severity scores, which were manually given by a clinical psychologist. These scores are of the Autism Diagnostic Observation Schedule (ADOS), which is one of the standard metrics for symptom evaluation for subjects who are suspected as ASD. We built our original corpus where we transcribed voice records of our ADOS evaluation experiment movies. Our corpus is the world largest as speech/dialog of ASD subjects, and there has been no such ADOS corpus available in Japanese language as far as we know. We investigated relationships between ADOS scores (severity) and utterance features we defined. Our system automatically estimated their scores using support vector regression (SVR). Our average estimation errors were around error rates that human ADOS experts are required not to exceed. Because our detailed analysis for each part of the ADOS test (“puzzle toy assembly + story telling” part and the “depiction of a picture” part) shows different error rates, effectiveness of our features would depend on the contents of the records. By comparing an ADOS score prediction result of adults and adults with that of children, we showed common features of ADOS scores between children and adults. Our entire results suggest a new automatic way to assist humans’ diagnosis, which could help supporting language rehabilitation for patients with ASD in future.
著者
飯干 紀代子 岸本 泰士郎 江口 洋子 加藤 佑佳 松岡 照之 成本 迅 三村 將
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.220-227, 2017-06-30 (Released:2018-07-02)
参考文献数
25
被引用文献数
3

テレビ会議システムを用いて遠隔で行う時計描画検査 (clock drawing test: CDT) の信頼性を, 対面検査との一致度, 加齢性難聴の影響, 利用満足度の観点から検証した。対象は, 健常高齢者 (NC) 38 例, 軽度認知障害者 (MCI) 15 例, アルツハイマー型認知症患者 (AD) 24 例, 計77 例 (女性39 例, 平均年齢75.6 ± 6.5 歳) であった。一人につきCDT を遠隔と対面の2 回, ランダムな順序で実施した。 全対象における遠隔と対面のCDT 得点の級内相関係数 (ICC) は0.83 以上, 疾患別でもNC が0.67 以上, MCI が0.59 以上, ADが0.84 以上であり, 十分な一致を認めた。施行順序別では, 遠隔・対面どちらを先に行ってもICC は0.81 以上であり結果に差はなかった。難聴が疑われる群においても, ICC は0.91 以上と一致度は高かった。遠隔検査に対する利用満足度調査では, 恐怖心や緊張感を多少なりとも感じる者が7 割いたが, 答えやすさについては, 対面と同等, あるいはそれ以上であった者が7 割を占め, 強い拒否感はないことが示された。
著者
岸本 泰士郎 リョウ コクケイ 工藤 弘毅 吉村 道孝 田澤 雄基 吉田 和生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.574-582, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
参考文献数
24

すべての医学領域において,疾患の重症度の評価は重要である。しかし,精神科領域では疾患の重症度を反映するようなバイオマーカーが不足しており,診断,治療,さらに新薬の開発などで問題が生じている。近年,情報通信技術(ICT)の発展が目覚ましく,こういった問題の解決にICTを活用する試みが行われている。その一つにテレビ電話を用いた中央評価があり,評価者によるバイアスを取り除くには有効な手段である。しかし,評価尺度そのものにも妥当性,信頼性などの問題が含まれている。一歩先のアプローチとして,ウエアラブルデバイス等を用いた診断支援技術の開発が複数報告されている。PROMPT(Project for Objective Measures Using Computational Psychiatry Technology)は日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究として始まった。慶應義塾大学を中心に7社が参画し,それぞれの会社の技術を持ち寄り,複数のデバイスから得られる情報を基に精神症状を定量することを目指している。また,UNDERPIN(Understanding Psychiatric Illness through Natural Language Processing)では科学技術振興機構(JST)CRESTの援助の下,静岡大学とのコラボレーションによって自然言語処理を利用した言葉(話し言葉や書き言葉)に現れる精神症状の特徴量の抽出を行い,精神疾患の予防・早期介入が可能になるような技術開発を目指している。
著者
岸本 泰士郎 吉村 道孝 北沢 桃子 榊原 康文 江口 洋子 藤田 卓仙 三村 將 Taishiro Kishimoto Michitaka Yoshimura Momoko Kitazawa Yasubumi Sakakibara Yoko Eguchi Takanori Fujita Masaru Mimura
雑誌
SIG-AIMED = SIG-AIMED
巻号頁・発行日
vol.001, 2015-09-29

Most of the severity ratings are assessed through interview with patients in psychiatric filed. Such severity ratings sometimes lack objectivity that can lead to the delay/misjudgment of the treatment initiation/switch. A new technology which enables us to objectively quantify patients’ severity is needed. We here aim to develop a new device that analyzes patients’ facial expression, voice, and daily activities, and provides us with objective severity evaluation using machine learning technology. This study project was accepted by Japan Agency for Medical Research and Development (AMED) and will launch this year. The background of the study purpose and methods will be presented.
著者
高須 遼 中村 啓信 岸本 泰士郎 狩野 芳伸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.1J4OS13a04, 2022 (Released:2022-07-11)

メンタルヘルスは社会的に重要な問題である。近年、メンタルヘルスの問題はインターネット上の活動と密接に関係している。そこで我々は、Twitterユーザーがメンタルヘルス問題を抱えているかどうかを分類するシステムを開発した。特定のパターンに合致するアカウントはメンタルヘルス問題を抱えている可能性が高いと仮定し、この仮定に基づいてポジティブな例とネガティブな例を100万件規模で収集した。また、キーワードに依存する先行研究とは異なり、メンタルヘルスに特化したキーワードを含まないユーザの発話を分類する可能性を検討するため、そのようなキーワードを含むツイートはデータセットから排除した。BERT、LSTM、SVMを学習させ、分類性能を比較した。BERTについては、大規模ツイートデータを用いた事前学習を行った。BERTが最も高い性能を示し、Accuracy 0.83, Recall 0.8, Precision 0.88,F1-score 0.84という実用レベルの高い分類性能を達成した。文脈情報の重要性とともに、一般的な発話からメンタルヘルス不調を推測しうることを示した。
著者
香月 祥 田中 宏和 中村 啓信 岸本 泰士郎 狩野 芳伸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4Xin150, 2023 (Released:2023-07-10)

我々はこれまで、診断や疾患評価、音声とその文字起こしや音声・言語学的アノテーションが付与されたUNDERPIN大規模精神疾患会話コーパスを構築してきた。このコーパスを用いて、うつ病患者の分類実験を行った。分類の際は、健常者・軽症患者・中等度以上の患者・うつ病と診断されたことがあるがテストの評価値で症状のない患者の4分類を設定し、4分類のすべてのペア6つそれぞれで2値分類を行った。結果、軽症・中等度以上の重症度に応じた分類ができること、また現在の症状にかかわらずうつ病になった性質で分類可能であることを確認した。分類に貢献した特徴量の分析では、重症度ごとに異なる特徴量や共通している特徴量を確認できた。今後は、新しい特徴量を追加しての学習や、特徴のもととなった人手のアノテーションを自動付与するシステムを構築したい。
著者
四井 美月 Liang Kuo-ching 廣原 茉耶 北沢 桃子 吉村 道孝 江口 洋子 藤田 卓仙 岸本 泰士郎 榊原 康文
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回 (2018) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4C2OS27b02, 2018 (Released:2018-07-30)

精神疾患の診断は現在,問診に基づく医師の主観的判断によって行われている.このような現在の診断方法は医師の経験に強く依存するため,正確な診断を行うための客観的な診断方法を開発する必要があると言われている.したがって我々の目標は,デバイスによって記録されたデータからうつ病患者の重症度を客観的に計算する深層学習手法を構築することである. 本研究では,うつ病患者と健常者を音声データで分類する深層学習プログラムを開発する.
著者
高宮 彰紘 田澤 雄基 工藤 弘毅 岸本 泰士郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.15-23, 2019-01-01

精神科診断は主に患者の訴える症状をもとに行われており,脳画像などの生物学的な検査は診断補助ではなく器質性疾患の除外目的で行われることが多い。近年は主に機械学習といった人工知能技術を脳画像検査に応用し,精神疾患の診断や治療反応に用いるための研究が行われている。人工知能技術は,個別の症例の診断補助となり得るうえ,精神疾患の病態解明に寄与する可能性がある。