著者
矢原 隆行
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.343-356, 2007-12-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

近年日本では,伝統的に女性的職業(pink-collar job)とみなされてきたいくつかの職業において,いまだ少数ながら男性の参入が着実に生じている.とりわけ,看護,介護,保育等のケア労働の領域で働く男性たちの姿は,それがさまざまな男性優位の職業領域に進出して活躍する女性たちの姿と対照して観察されるとき,今日の職業領域におけるジェンダー体制の変容を体現するものとして解されうる.しかし,これまでジェンダーに関する大量の成果を生み出している女性学のみならず,「男性性」に焦点をあてる男性学の領域においてさえ,そうした「男性ピンクカラー」に焦点を当てた社会学的研究はきわめて乏しい.本稿では,現代日本における男性ピンクカラーについて,とりわけ「ケア労働の男性化」という視座から観察を試みる.当事者を含む多数の語りから明らかなように,男性ピンクカラーは,ケア労働の領域における少数派であるがゆえ,時に「トークン」として位置づけられる.しかし,その位置づけは,男性が多数派であるような職業領域における少数派としての女性と単純な対称をなすものではない.そこに見出される捩れは,ケア/労働およびそれを取り巻く現代社会における普遍としての《男》というジェンダー秩序を映し込み,かつ映し返すものである.
著者
矢原 隆行
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.343-356, 2007
被引用文献数
1

近年日本では,伝統的に女性的職業(pink-collar job)とみなされてきたいくつかの職業において,いまだ少数ながら男性の参入が着実に生じている.とりわけ,看護,介護,保育等のケア労働の領域で働く男性たちの姿は,それがさまざまな男性優位の職業領域に進出して活躍する女性たちの姿と対照して観察されるとき,今日の職業領域におけるジェンダー体制の変容を体現するものとして解されうる.しかし,これまでジェンダーに関する大量の成果を生み出している女性学のみならず,「男性性」に焦点をあてる男性学の領域においてさえ,そうした「男性ピンクカラー」に焦点を当てた社会学的研究はきわめて乏しい.本稿では,現代日本における男性ピンクカラーについて,とりわけ「ケア労働の男性化」という視座から観察を試みる.当事者を含む多数の語りから明らかなように,男性ピンクカラーは,ケア労働の領域における少数派であるがゆえ,時に「トークン」として位置づけられる.しかし,その位置づけは,男性が多数派であるような職業領域における少数派としての女性と単純な対称をなすものではない.そこに見出される捩れは,ケア/労働およびそれを取り巻く現代社会における普遍としての《男》というジェンダー秩序を映し込み,かつ映し返すものである.
著者
矢原 隆行
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

国内外の研究成果を収集・整理し、多様な福祉実践の場における参加と協働の技法としてのリフレクティング・プロセスの有効性の検討をおこなうため、①文献研究、②北欧における視察調査、③国内における協働的アクションリサーチを実施した。文献研究および海外での視察調査により明らかとなった多様な領域でのリフレクティングの活用実態と、その基本となる理論のまとめ、さらに、精神保健福祉専門職による研究会、および、大規模社会福祉法人をベースとした協働的アクションリサーチのプロセスと結果については、学術論文、学会報告、著書の形で広く発信をおこなった。
著者
矢原 隆行
出版者
九州大学大学院人間環境学研究院人間科学部門共生社会学講座
雑誌
共生社会学 (ISSN:13462717)
巻号頁・発行日
no.6, pp.59-71, 2008

社会構成主義(social constructionism)をその理論的背景に持ち、現在では心理学、社会学、福祉学、医学等、様々な学問領域に影響を与えつつあるナラテイヴ・セラピーの諸潮流のなかでも、ノルウェーの精神科医トム・アンデルセンによって提唱されたリフレクテイング・プロセスの社会学的可能性に関しては、国内においてこれまでほとんど言及されていない。本稿では、リフレクティング・プロセスにおける「会話についての会話」が有する理論的および実践的な意義を社会システム論の観点から観察するとともに、その社会学的応用可能性について検討する。
著者
矢原 隆行 Yahara Takayuki ヤハラ タカユキ
出版者
日本家族研究・家族療法学会
雑誌
家族療法研究 (ISSN:09106022)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.70-77, 2011-04-30

The Reflecting team has drawn much attention from all over the world since Andersen introduced the process in 1987. Also in Japan some practices of reflecting teams have started recently,yet there are still only few studies to explore the theoretical implications of the reflecting processes. Andersen preferred to minimize the use of the term "reflecting team",because that term represents only one of almost infinite methods of organizing "reflecting processes"which means the shiftings between being engaged in talking about an issue and thinking about the talking about the issue. Therefore we must avoid the danger of its being reduced to just a technique,a novel"how to" in the manual of therapeutic practices.Such a reduction would be the loss of the philosophical richness of the ideas behind the concept, and the ways in which the ideas can be further developed.This paper attempts to examine the theoretical implications of the reflecting processes by applying Luhmann's theory of observation,as a theory of distinction. Luhmann has defined the concept of observation abstractly,so that it can be applied to psychic as well as to social operations. In addition,to explore the essence of reflecting processes we utilized three illuminations that glow by themselves while at the same time reflecting other lights. The first was the metaphor of mirror by Luhmann,that makes distinction to illuminate second-order observing systems. The second was "transversalite"by Guattari that makes distinction to indicate the concept of heterarchy. The third was the ancient Japanese linguistics by Sakabe that makesdistinction to indicate"hanashi".These illuminations enable effectively our exploration about the theoretical implications of the reflecting processes.