著者
坂本 考弘 木村 光 矢崎 善一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.860-863, 2016-01-30 (Released:2016-03-16)
参考文献数
3

急性冠症候群は致死的疾患の代表的疾患であるが, 救急外来を受診した患者の1~8%は帰宅させられている。その原因の一つとして無痛性心筋梗塞が挙げられるが, 急性冠症候群の25%は胸痛以外が主訴で来院すると言われており, 悪心嘔吐のみの主訴は1%程度である。嘔気嘔吐のみの症状にて内科外来受診し, 前壁中隔心筋梗塞と診断され冠動脈バイパス術の適応となった1例を提示し, 本症例について診断学を中心に文献的考察を含めて検討した。高齢者はリスク要因が少ないからといって急性冠症候群を否定できず, 本症例のように他の随伴症状を認めない場合には鑑別に挙げる必要がある。鑑別に挙げることで致死的疾患である急性冠症候群の見逃しを防ぐことに繋がると考えられる。
著者
関 年雅 矢崎 善一 堀込 充章 池田 宇一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.259-265, 2013 (Released:2014-09-13)
参考文献数
10

2011年1~3月の間に当院に入院した非代償性心不全患者で, これまでに3回以上の心不全入院歴があるか, または強心薬依存状態でフロセミド40mg/日相当以上, あるいは複数の利尿薬を内服していた65歳以上の高齢者心不全増悪症例計18例 (平均81歳) に対するバソプレシンV2受容体, トルバプタンの有用性を検討した. トルバプタンの経口投与開始24時間後には, 尿量が有意に増加した. 心エコーから求めた心内圧や脳性ナトリウム利尿ペプチド (brain natriuretic peptide ; BNP) 値は有意に低下した. 一方, 血圧に関しては有意な変化は認めなかった. 血清クレアチニン値に有意な変化はなかったが, 血清ナトリウム濃度は3例で145mEq/Lを超えたため, トルバプタンを中止した. 入退院を繰り返す非代償性心不全において, トルバプタンの追加投与は, 少量の内服でも有効な尿量増加が期待できる.